横浜公園(横浜スタジアム)から象の鼻パークに至る、一直線に伸びた道路。これが日本大通りである。いま歩いても昭和初期にいるような錯覚を覚えるほどに、歴史的建造物が残る一角だが、その中心部に横浜地裁がある。風格ある外観だが、実はこれはレプリカだ。この場所で横浜軍事法廷が開廷されていたのだが、レプリカとはいえほぼ当時のままを再現しているので、思いを巡らすことができる。B・C級戦犯はここで裁かれ、巣鴨プリズンで刑の執行がなされた。本作はドキュメンタリー風だが、ノンフィクションではない。原作に脚色を加えて映像化したものだが、黒澤組が集結しているため、全体の構成も重厚かつ風格のあるものとなった。橋本忍監督は後年、伝説のカルト作「幻の湖」を撮ることになるが、まだこの頃は東宝のエース脚本家として知られていた。特に当時は最盛期だったので、ホンの出来は凄くいい。フランキー堺の「口八丁だがまじめな床屋」ぶりも素晴らしく、また笠知衆の存在感は抜きんでていたし、藤田進の頼りない軍人ぶりは、当時の世相を大きく反映させた役柄であった。「下っ端は戦争の被害者」という視点については、少なくとも床屋はひとりの米兵を刺し殺しているわけで、手加減したのに・・・というのは情状酌量にならない。当時は皆頷いたかも知れないが、戦争の不条理はいまこの時代に再見した方が、より「真実」がわかるだろう。星4つ。