著者は、地下鉄サリン事件で無差別殺人を行ったオウム真理教の教祖、麻原彰晃の四女である。地下鉄サリン事件当時、5歳であり、両親が逮捕された後も教団の中で育てられ、15歳になるまで事件のことを何も知らなかったという。
本書は、著者の立場から、事件前後の教団内部の様子、麻原彰晃の父親としての姿、そして事件後も教団の教えをかたくなに守っている信者たちの姿を描いている。
各々20ページ前後の10章からなっている。著者が幼かったこと、世間から隔離されて育てられたため一般的な常識を持ち合わせていなかったこと、また人としての情緒に欠けると思われる部分もあり、ノンフィクションのレポとしては、甚だ物足りないできではあるが、文面から著者の幼い悲鳴が聞こえてくるようで、読者を暗澹たる気持ちにさせる。
小さい頃から過酷な修行を強いられ、両親から十分な愛情を受けず、また世間の常識にも触れずに育ったにもかかわらず、著者は教団のあり方に対する疑問を持ち続け得た。しかし、両親や教団幹部、オームの教えを否定しきれないような記述もあり、洗脳からの脱却の難しさを感じさせる。
本来なら、両親が逮捕された当時に、彼女は保護されるべきであったのではないか。新しい戸籍を与えられ、誰も彼女を知る人のいない場所で、平穏に暮らす権利があったのではないか。実際に殺人を犯した未成年者の場合ですら、成人して、その罪を問われることはないのに、何の罪もない著者が非難され続けることの矛盾。
けれども、殺された被害者のこと、その何倍もの数の重症を負った被害者のこと、そのまた何倍もの数の軽症を負った被害者のこと、そして、その被害者たちのまわりで未だに事件の後遺症に苦しむ家族や友人のことを思うと、著者自身も被害者のひとりのはずなのに、非難の目を向けてしまう自分がいることに苦しくなる。