この本では、佐野さんが40歳代頃のエッセイが読める(離婚後、再婚前)。冒頭の「「まえがき」のかわりの自問自答」で、読者は、佐野洋子を読める人かそうでないかが、きっとわかるだろう。
この本の特徴は、芸術、とくに絵本に関しての言及が多いことだと思う。「ゆるやかに崩壊していった家庭を営みながら」「ただそれだけのことを願って」『100万回生きた猫』を作ったとも述懐されている。今も熱心に読み続けられているアトリー、長新太、高野文子、やまだ紫などへの評価にも、本音がたっぷり出ていて、にやにやと読んでしまった。
また、一人息子に首ったけのあまあまお母さんの面も、かなり披露されている。「どの子供の中にも子供の魂と大人の魂が同居している。」そして、「子供をあなどっていない」小沢正さんをたたえながら、今の児童文学は「つじつまが合いすぎ、正しく(て)面白くない」と喝破している。うーん、さすがだなあ。
佐野さんは不思議な人だった。人生も後半へ向かうにつれ、過激さがましていった。そんな中、この本は、端正なたたずまいが印象的な一冊。