主演のクリスティーナ・リッチがプロデュースに関わるほどの思い入れを持った作品と言う事で観てみました。
まだうつ病が社会的に十分な認識を得ていなかった80年代初頭が舞台で、原作者であるエリザベス・ワーツェルの自叙伝の映画化です。
機知に富み優秀な頭脳を持ちながら、うつ病という制御不可能な心の病を背負ってしまったがゆえに、家族や友人からも孤立を強いられてしまう主人公の悲劇を真正面から描いた非常にシリアスな内容の作品です。
この映画で特筆すべきは、やはり主演2人リジー役のクリスティーナ・リッチと彼女の母親を演じたジェシカ・ラングの渾身の演技でしょう。
娘を心から愛しているにもかかわらず問題を抱える娘を理解できず、更にシングルマザーとして彼女を育て上げなければならないという重圧とによって常に過度のストレスを抱えている母親と、その母親の心痛や苦労を理解し、申し訳ないという気持ちを持っていながら、自分をコントロールできずに母と対立し、苦しめてしまうてしまう娘。その母娘の凄まじい葛藤を、主演の2人は見事に演じ切っています。
リジーの極端な感情の起伏は尋常ではないとは言え、彼女の抱える問題は決して特殊なものではなく、ごく普通の人間がややもすれば陥りがちな問題であることがこの映画を見ているとよく分かります。自分は何のために存在するんだろう?もしかしたら自分は存在してはいけない人間なのではないだろうか?そんなことをちらっとでも思ったことのある人であれば、リジーの人知れぬ苦しみに共感できると思います。クリスティーナ・リッチがこの作品に共感を覚えたのも恐らくそのようなところからではないかと思います。もちろんこれは僕の勝手な憶測ですが・・・・。
この映画はうつ病が決して特殊な病いではなく、誰しもが自分の中にその可能性をはらんでいる事に気付かせてくれます。
そしてもうひとつ。両親の対立と不和、お互いに対する憎しみや怒りが、子供の心にどれだけ大きな癒し難い傷を残してしまうか、というところにもぜひ注目してこの映画を見て下さい。それを念頭に置くことで、リジーの苦しみをより深く理解することができると思います。
いろいろな意味で、非常に現代的な問題を孕んだ作品です。
蛇足ですが、この邦題は何とかならないものでしょうか?原題のProzac Nationが非常に印象的かつ的確な題名であるばかりに、邦題のセンスのなさが際立ちます。もう少しましな邦題が付いていれば、もう少し映画自体の評価も良くなっていたのではないでしょうか?