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大好きだったのに・・・
表紙に家族の集合写真(それもおそらく写真館で撮影されたであろう正式なもの)を使っているところからして既に
「さあ、これから私のことを、家族のことを語りますよ」
という意気込みというか覚悟のようなものが感じられますが
内容もそれに恥じないものになっていると思います。
彼女の文章を、しっかり物事を見つめた視線を、感性に溢れた軽快なエッセイをもう読めないのは残念な限りです。
そしてもちろん抜群にうまい文章は、なにげない日常を見つめる上でのお手本になるともいえます。
本書はかなり長編のエッセイを3編まとめた一冊です。
92年、97、02年と5年おきの自らの周辺を拾っており、それぞれのテーマは「母の病気」「祖母から父を経て伝わった半島の料理」「在日の識字学級」といったところです。そしてこの3つに共通しているのは、「家族」の二文字。著者自身は離婚経験者で、「一般的な意味で使われる『家族』を作るのには失敗し」(170頁)ていますが、それでも家族にかわるつながりを、うらやましいほどに、周囲に張りめぐらせることが出来ている様子が綴られているのです。
長編エッセイというと須賀敦子を思い起こしますけれど、その文章が読む側の心にしっとりと染み入ってくるところが須賀敦子と鷺沢萠に共通している気がします。
本書の終盤で、半島出身者だった祖母の眠る墓に向かって著者が韓国/朝鮮語で語りかける言葉がハングル表記されています。著者はその言葉を言いながら少しだけ泣いてしまった自分を恥ずかしく思い、和訳をあえて記さずに済ませています。私はこの程度のハングルは読めてしまうのですが、祖母への愛情と、生前にもっと語り合いたかったという素直な気持ちがちょっぴり後悔の念とともに語られています。決して恥ずかしがることなく日本語表記してもよかったのではないかと思いました。
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