別な小説の後書きで、自分はホラー作家ではなくミステリー作家なのだと書いておられた長坂氏が、完全にホラーの呪縛から抜け出して書かれた本格ミステリー。
トリックなどは、ミステリーを読み込んだ人々には簡単なのかも知れないが、ミステリーマニアではなく、なんとなくミステリー好きというレベルの自分には、きちんとヒントや伏線を親切に物語中や図面で提示してくれる書き方に好感が持てました。
物語は、二時間もののサスペンスドラマにありそうな内容ですが、長坂氏の個性も適度に出ていて、他作とつながるさりげない仕掛けもあり、長坂作品好きとしても私は充分満足です。
むしろ、氏のホラー作品にある強引さとかアクの強さとか気持ち悪い描写などが良い意味で緩められているため、最後までイヤな気分にならずに読み終えることが出来ました。
ラストの、ちょっと切ない終わり方も大好きです。
現在入手しやすい長坂小説では、これが一番、開口部が広いのではないでしょうか。
文庫化希望、そして、できれば続編希望です。