佐渡、という土地には旅情を誘われる。古来政治犯・思想犯の流刑地とされ、江戸時代には幕府直轄領として無宿人が送り込まれた地、自分の住む津軽が古くは流刑地だったということからも佐渡という土地には何か興味があり、逆境に置かれたものが力強く生きる地、というようなイメージが浮かんでくる。もちろん実際の佐渡にはツタヤもあればショッピングモールやコンビニもあり、人々が今の暮らしを淡々と送っているのだし、そんなイメージは一種のオリエンタリズムなのかもしれないが、自分としてはやはりそんな興味が強くあって、この宮本常一さんの著書にも手が伸びた。
氏はその生涯で少なくとも四十回近く佐渡を訪れたようで、本書は民俗学上の調査で訪れた氏が徒歩で佐渡を歩き、出会った人々との話や見た事物についての随想をまとめた著書で、豊富な白黒写真を収録、巻末には註、池田哲夫氏による解説、索引を収録。国仲・大佐渡・小佐渡、それぞれの地域の様子を生き生きと語っていく。さりげなく墓の制度の地域差を説いたり、地域振興のための策を練っていたり、オーソドックスな調査に見えながら実践的な目的も含んだその旅程は、佐野眞一さんの評伝にあったような「人を生かそうとする」美しいもので、その生き方にはあこがれる。
ここにあるような佐渡は変化してしまったのかもしれないが、でもやはり行ってみたいという旅情は消えない。佐渡と宮本常一氏、両者の魅力がある一冊。