官能小説としてはまあまあかと思うが、細部が弱く今一つのめり込めないものを感じた。(例えば、香奈は一体どこでどのようにして「御主人様」と出会い、いかにしてあのような関係になったのか。)また、「奴隷になるということは自由を奪われるということではない。隷属というのは、他のものに対して寛容になるということなのだよ」(191頁)というが、主人との関係では自由を奪われている訳だし、その関係を守るためには他のものに対し不寛容たらざるを得ない。その意味で、「SMとは嗜好ではなく関係性の問題だ」(189頁、208頁)という命題はそのとおりかとは思うが、SMとは日常における関係性の組み換えの単なる一パターンに過ぎず、果たしてそのように大仰に云う必要があるのか否か、やや疑問に感じた。
「自分はどのタイプの女とするべきか、どのタイプの女と関係を持てば、自分がもっとも心地よい状態を作れ、かつ相手にはそれ以上の快楽をもたらすことができるのか。そこを把握すれば、どんな女でも簡単に口説ける」(185〜186頁)。
なお、末尾の「スモールワールド」の内部描写を具体的に想像するためのDVD素材としては、『躾と調教 悦虐のドッグカフェ』(主演:柳田やよい、川上ゆう)などがよい。