元ニューヨーク近代美術館のエデュケーターで美術史家、美術教育家であるアメリア・アレナスとともに、日本に対話型の美術鑑賞を普及させた上野行一先生の本。ハードカバーの立派な装丁で、書かれた文章とカラー図版を対照しながら見ていくのが楽しい。平易な記述だが、これまで学会誌でしか知ることのできなかったテクスト論や認知科学の知見、ハウゼンの理論など対話型鑑賞の背景を知ることのできる専門的な内容もある。また、鑑賞の実践場面での、美術館での子どもの反応や大学の授業での大学生の様子などが興味深い。
美術鑑賞が、専門家の知識をありがたく伺う受け身のものではなく、鑑賞者が主体となって自由に見て楽しみ、それぞれの意味を構成していくものだという、作品観や鑑賞者観の転換は大きい。
新しい学習指導要領の図工や美術の「鑑賞」領域は、小学校1、2学年「感じたことを話したり,友人の話を聞いたりするなどして,形や色,表し方の面白さ,材料の感じなどに気付くこと。」、中学校1学年「造形的なよさや美しさ,作者の心情や意図と表現の工夫,美と機能性の調和,生活における美術の働きなどを感じ取り,作品などに対する思いや考えを説明し合うなどして,対象の見方や感じ方を広げること。」等、上野先生達の研究と実践を元に対話型鑑賞が前提となって書かれているのだから、図工や美術の教員は必読である。