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この上下巻に及ぶ力作を山本氏に書かせたのはやはり『百人斬り』『南京虐殺』といった今でも一部正史として信ぜられている「虚報」への怒りだ。
氏の体験、軍隊経験からこれらはデッチ上げられたものだ、と強い調子で批判を加えている・・・。
と書くと、「新しい歴史教科書をつくる会」だのの読者が喜びそうだが、山本氏の筆は真逆に進む。
「虚報」を生み出したのが日本人ならその「虚報」に撃たれるのも日本人。そして「虚報」に日本人を撃たせて平然と居直る日本人がいる、と指摘する。
日本人の精神が自ら生み出したものが「虚報」だ。
そして恐ろしいのは「虚報」を生み出す構図は日本人にとって実に自然な精神の成り行きなのである・・・。
山本氏はこのことを「対象化」しない日本人に何より怒りを覚えている。
戦争の実際を知らずして「大東亜の大儀」だのを信奉する。
大儀などと言うのは戦争に他人を行かせる人間が論じていることで多くの戦争に借り出された人間にとってはどうでもいいことだった。
山本氏は平成3年に亡くなっている。
山本氏が本書に綴った後悔、悔恨の念は痛々しいほど。
戦争体験者がこのような思いを胸中に秘めていたため、日本は戦争という手段をひたすら回避した経済立国の道を歩むことができたのであろう。
「つくる会」だの「自由主義史観」だのレイシスト都知事だのが登場するのは、彼らが死去し始めてから。
本書は連中のトンチンカンな国家論にダマされないためにも、読んでおくべきだろう。
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