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私のプリニウス (河出文庫)
 
 

私のプリニウス (河出文庫) [文庫]

澁澤 龍彦
5つ星のうち 4.0  レビューをすべて見る (2件のカスタマーレビュー)

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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

約二千年前、古代ローマの博物学者プリニウスが、世界最大級の自然誌事典『博物誌』全三十七巻を著した。古今東西の文献や当時の思想を総動員して編まれたこの『博物誌』は、天文地理から動植物、鉱物、薬物、人間文化に及ぶ一大奇書であった。この大著に魅せられて渉猟する渋沢龍彦は、プリニウス独特の奇想天外な想像力を楽しみつつ、怪物や迷宮や畸形など幻想と想像の異世界へと読者を誘う。

登録情報

  • 文庫: 216ページ
  • 出版社: 河出書房新社 (1996/09)
  • ISBN-10: 4309404839
  • ISBN-13: 978-4309404837
  • 発売日: 1996/09
  • 商品の寸法: 14.8 x 10.6 x 1.4 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.0  レビューをすべて見る (2件のカスタマーレビュー)
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7 人中、7人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By 紫陽花 VINE™ メンバー
形式:文庫|Amazonが確認した購入
博覧強記の鬼才、澁澤氏が多くの自著で引用しているプリニウス「博物誌」から題材を自在に採って、紹介がてら解説を加えたもの。プリニウスの事を"法螺吹き"等と揶揄しながらも、彼の性向(粗忽で神秘好き)を愛している事が窺え、愉快なエッセイに仕上がっている。澁澤氏は「幻想文学としての「博物誌」」と捉えているようだ。

ランダムに選んだとは思えない程、抱腹絶倒のエピソードが満載。"横隔膜"と笑死する闘士との文学的関係。トリカブトの毒を塗った指で陰核を愛撫する事で妻を毒殺した男の話。まさに珍談。また、海中には陸上動物に対応する生物が必ず居るとの信念の下、"海ウサギ"の生態について語る。カメレオンは雷雨や暴風を起こす力を持ち、インド洋の鯨は4エーカーあると言う。そうかと思うと、架空の動物サラマンドラの毒性について、情熱を込めて縷々と語る。また、自著でギリシャ人の言説を散々引用しておきながら、ギリシャ人の無知を貶す。類い稀なる神秘の蒐集家にして、根拠無き自信家。そんな姿が浮かび上がって来る。そして、澁澤氏の解説がその笑いを飛躍させるのだ。まだまだある。山羊の血で砕けるダイヤモンド。体調管理のため自ら浣腸するイビス(水鳥)や止血する河馬。嘴で交尾するカラス。海水から跳び出して飛行するイカ。陸に這い上がり人間と闘う体長9mの大タコ。鷲とドラゴンの対決。発毛を阻止するヒヤシンスの根。人語を操る雄鶏。ポプラや鳥の涙が琥珀と化す神話。「不思議の国のアリス」に限りなく近い世界である。「自然は鉄に足と意志を与えた」--磁石の事である。詩人でもあったようだ。南方熊楠も「博物誌」に興味を持っていたらしい。

澁澤氏が軽妙洒脱な一面を見せてくれた作品で、大いに楽しめた。「幻想文学」の意味も胸に染みた。題名の意は、やはり「私の愛するプリニウス」だったのだ。
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形式:文庫|Amazonが確認した購入
渋澤龍彦はあくまで書斎派の博物誌をこの本で展開している。ということは、渋澤は”怪しい博物学者なのだ”。椎名誠の怪しい探検隊みたいに。本書とライアル・ワトソンの例えば「風の博物誌」を比較してみるとわかる。ワトソンは日本では松岡正剛などによれば、まるで超能力とUFOだけの際物学者のように誤解されている。でもワトソンは歴とした人類学や動物学や海洋生物学その他で複数の学位を取得している。スーパーネーチャーの彼の本はこうした経歴を無視して読むことはできない。ワトソンとは個人的にロンドンであったことがあるが、その際、アイスランドに鯨の観察に行ってくると言っていた。アクアラングをつけて。こういうワイルドさは渋澤にはない。書斎派だから。だいたい日本人で、南方熊楠でさえ、こんなワイルドな博物誌に耐えられるだけのフィジカルがあるとは思えない。あのうじうじと自分の健康ばかり気にする弱虫のダーウィンでさえ、世界中をビーグル号で危険な探検の旅に出た。しかし、ワトソンの著書、「風の博物誌」にも「生命潮流」にも、それぞれ数百冊ある参考文献リスト中に ”Gaius Plinius Secundus”の名前はなかった。おそらくワトソンの家の書庫にはプリニウスの全巻の本はなかったのだろう。もしかしたら一冊もないかもしれない。渋澤の書庫には英語版にせよなんにせよ全巻に近いものは確実にあっても。でもそれはお互いさまで、ネイチャーの二十年分の保管が渋澤にあるとは、思えないし、おそらく一回分でもないだろう。両者はともに今では故人だが、二人の書く博物誌は似て非なるものである。ところで渋澤には「うつろ舟」という著書があり、ワトソンにはおなじみのスーパーネイチャーがある。彼ら二人のUFOに関する記述が、いかに異なるかは、本書とワトソン本の二つの博物誌についての本を比べてはじめて理解できる。同じように、もしワトソンが渋澤の得意分野の(少なくとも博物誌よりは)絵画論に挑めば、自分の動物学の経験と知識がなんらかの形で影響するだろう。そんな気持ちでワトソンと出会った経験を、絵画論に生かしたのが、「宇宙に開かれた光の劇場」上野和男・著である。フィジカルを要求される自然科学の立場で、17世紀のオランダの画家・フェルメールを分析した本である。
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