一気に3回読んでしまった。
作者に乗り移り、お大師様と作者と三人で歩いているような気持ちになった。
等身大の旅。筆者は、30過ぎの若き女性テレビディレクター。
教養番組風のお遍路日記ではない。
だって、彼女は、どんな有名な故事来歴のある札所に行っても、教養じみた背伸びした情報を全く伝えないのだから。そんなこと、今時の人間には関係ないといわんばかりで、最初は戸惑ったほど。
でも、それはTVディレクターとしての名演出のようだ。
また、サバイバル系でもない。野宿はせずにすべて遍路宿に泊まる。そういう点では、女性でもある程度安心して回れる、お遍路の好ガイドブック。
しかし、野宿をしないお遍路さんは、お金と時間に余裕がなくては不可能。
全行程は1,400キロ。だから、最低でも40日はかけ、一日6,000円〜6,500円くらいの、一泊二食の宿泊費。驚いた。お遍路に出られること、お遍路をやり遂げられることは、特別のことなのだ。
本人の努力と準備はもちろん、時間的にも好条件が整わなくては。
だからお大師様に呼ばれた特別な時間になるのだろう。
いずれにしても、筆者は、歴史とか仏教とかの予備知識のない等身大の現代人として、とにかく『歩く』。そして、歩いているうちに、お遍路になっていく。
札所の人、歩き遍路たちとの出会いについても、ありのままに率直に伝えてくれている。
同時に、他人の余計なことには首を突っ込まず、自立して生きている、男前の筆者の姿も浮かび上がってくる。
実用書としてもとてもいい。筆者にロケハンをやらしたら、絶対に間違いないだろうと思う。
その日に歩いた歩数。いくらお金がかかったか。毎日、囲み記事にしてある。
何時に出発、何時に宿へ入ったか。実際に泊まった宿以外に、どのような選択肢があるか、宿名と電話番号も羅列してある。
宿での風呂や食事や洗濯などについても、良いことも困った点もありのままに伝えてくれるから、自分が旅立つときに、どんなことに気を配ればいいかバーチャルに学習できる。
写真もない。わかりやすくて可愛いイラストのみ。
それでいて、お大師様と同行二人で歩くことの意味が、最期に胸にすっと落ちた。