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私たちはなぜ狂わずにいるのか (新潮OH!文庫)
 
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私たちはなぜ狂わずにいるのか (新潮OH!文庫) (文庫)

春日 武彦 (著)
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

精神科医である「私」とは一体何者なのか。患者の妄想には巻き込まれるのに、自ら狂気を選び取ることはできないのか。あらゆる狂気と向かい合ってきた著者が、そのメカニズムに迫る。


著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

春日 武彦
1951年京都生まれ。日本医科大学卒業。都立松沢病院に勤務する精神科医。ロックと小説を愛している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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5つ星のうち 5.0 狂気とは何か, 2006/1/17
By 丁三 (千葉県) - レビューをすべて見る
(TOP 100 REVIEWER)   
私たちはなぜ狂わずにいるのか、というなんとも刺激的な書名に惹かれて手にとってみた。

人は誰しも狂気を内に秘めていて、正常な人間と狂った人間の境界はあいまいなのだ、という言説はよく耳にする。小説や芝居に狂気を扱ったものが多いのは、狂気と正気は一人の人間の中で地続きでつながっている、という認識がどこかにあるからだろう。「発狂」は「死」と同様、自分を失ってしまうことである。だから、狂気は自己存在への不安、自己喪失への強い恐怖をかきたてるのである。

ところが本書は、正気と狂気の間には大きな隔たりがある、という。決して一人の人間の中で連続しているのではない。だから、狂気を装うことはできても、ほんとうに狂うことはできない。拘置所で拘禁が続くと分裂症の症状が出るというが、それも一時的なものらしい。

養老孟司氏は「バカな大人にならない脳」で、連続殺人犯、大量殺人犯にはあきらかに脳に異常があるという。PTSD(心的外傷後ストレス障害)でも海馬に萎縮が見られる。精神疾患がすべて脳の器質障害ではないと思うが、足が折れたら痛くて歩けない、というような怪我や病気と、基本的には同じだとすると「狂気」への恐怖も多少はやわらぐ。狂気も死もそれほどたいそうなことではない、と別の著書のなかでも春日氏はいっている。狂気はただの病気、特別な思い入れは無用、というのが本書の結論であろう。

著者の春日武彦氏は現役の精神科医で著書も多い。内外の文学に造詣が深く、その著作には臨床医としての医学的、科学的視点よりも、むしろ文学者としての視点を強く感じる。文章も巧みで、狂気の文学的、哲学的側面と病気としての側面をうまく書き分けていると思う。なかなか厚みのある一冊であった。
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23 人中、20人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0 狂気の捉え方は大学の先生以外に学べ, 2004/3/21
 一貫して正常と狂気のハザマを非常に個人的な視点から(悪い意味ではない、教科書的な、あるいは他人の理論をふりかざさない、という意味で)追求する著者の初期の執筆。精神科を志す者全てとはいわないが、狂気に対する好奇心はやはり精神科医のもの。とりわけ、一般人の「狂人」に対する(著者によれば)ロマンチックな空想が、医者からみて的外れであることをふまえ、狂人と非狂人である自分との接点にこだわる視点は著者ならではのもの。春日ワールドへの入門書といえよう。
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5つ星のうち 4.0 狂気という凡庸さについて, 2009/4/30
単行本のタイトルは「私がなぜ狂わずにいるのか」だった。

端的に言えば、著者はいわば「狂気へのあこがれ」とでも言うべき「健常人」の物語依存癖を批判している。

著者によれば、狂気は、理性あるいは意識の表面に覆われた、原初的なエネルギーの純然たる発露、といったものではない。誰もが狂気の種子を持っている、などという思い込みは、ひどくロマン主義的なものなのである。確かに、狂うことさえできないということは、才能がないのである。しかしその一方で、むしろ、我々の日常と狂気の世界は不連続なのであって、一見、連続的に見える、見てしまう、見てしまいたくなることが落とし穴なのである。

著者の意図とは違うだろうが、私はこの視点を得たことで、一見「危うく」見せることで何か文学的なふるまいをしたかのような二流の作家や、二流の演劇人・芸能人、そして二流の作品、そういうものへつい惹かれそうになる自分の「憑き物」が落ちたような気がした。じっさい、私はずいぶん賢くなったと思っている。本書のおかげである。
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