新しい言葉・概念が科学分野で生まれると、その観点で人文社会の分野を見直す試みが行われることはよく起こります(例:一般システム理論)。1990年代後半に産声を上げた「複雑ネットワーク理論」が生まれて今年(2007)で十年ほど経つのですが、その理論構築の過程で分かってきた新概念(スモールワールド/クラスター/スケールフリー/ネットワークの中心性)の観点から人間関係・組織を改めて捉え直してみよう、というのが本書の主題です。複雑ネットワーク自体、点と点との結び付き方に注目する学問であり、その際に各点の個性を区別しない処から出発しますので、「そんなドライな学問でウェットな人間関係など語れるものか」と思われるかもしれません。しかし本書を読んでみると、結構新しい見方が出来るものだなと感心しました。(デマルコ著「ピープルウエア」「ゆとりの法則」の内容(例「人事組織図(樹形図)の隙間にこそチャンスがある」「ゆとりがないと変化に対応できない」)を本書の立場で再解釈できて愉快に思いました) 中には、やや強引/手前味噌的な解釈の仕方も無きにしも非ずでしたが、総じて楽しく読めましたょ。
(遠山啓先生の著書「文化としての数学」「無限と連続」で「構造=集合+相互関係」という数学独特の見方を学んだのですが、複雑ネットワークは「相互関係」に注目した学問の一例として興味深いですね。抽象度を上げる程、結構一般的なことが言えるものなんだな、とも思ったりしました。【組織の頑丈さ】を【縮退度(※)】の観点で見直したらどうだろう、とも考えたりすると愉快でした。(※)「遺伝子・脳・言語」(堀田・酒井)の「複雑性さと縮退」(174-176頁)の記述)