1つひとつのストーリーがまるで映画のワンシーンを見ているかのように鮮明なイメージを抱かせる一方で、内容そのものはどこかあいまいで、登場人物たちも中性的な印象を残す。本書で語られているのは『体の贈り物』ではほとんど見られることのなかった非日常世界とそこに潜むある種の狂気。特に本書のタイトルにもなった「私たちがやったこと」ではその狂気が恋人たちを、1人は目をつぶし、1人は耳の中を焼くという異常な行為に導いてしまう。
読者は、著者の独創的な想像力の波に容易にさらわれ、五感で味わう読書の醍醐味を見出すだろう。ゆらゆらと揺られながら、次第に物語の中枢にのめり込んでゆく。
本書では、登場人物は「私」と「あなた」で語られ、名前が付いていない場合が多い。そのため性別や文脈、人間関係などに関してやや不明瞭な印象を受けるかもしれないが、それが本書の特徴を形成する重要な要素の1つであるともいえる。そして読書後、数日経ても物語の深層を追っている自分がいることに気づくだろう。(戸澤敏子) --このテキストは、 単行本 版に関連付けられています。
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エイズ患者の世話をするホームケアワーカーを主人公とした小説だが、訳者が指摘するように、そこからはセンチメンタルな部分はすべて排除されている。そのストイックさ、そして無駄のない文体が作り出すリズムが読む者の心を震わさずにおかない。
さて、『私たちがやったこと』である。連作短篇だった『体の贈り物』とは異なり、本書は個性的な7篇からなる短編集である。表題作は、柴田元幸氏編訳の『むずかしい愛』にも所収されており、その発想の奇抜さが他の作家の短篇からは際立っていた。
小説を書くときに「リズム」を最重要視するといっているだけあって、その文章は端正で、後に残されたことばたちは小気味よいリズムを作り出す。そのリズムが奏でるのは、「人間関係」といういろいろな和音からなる音楽だ。
無駄なものが排除され、そこに男男・男女・女女の人間関係を見るとき、人間同士の真のつながりを目の当たりにしていることにように思う。
作者レベッカ・ブラウンの人間を見る、その眼差しの前に僕は立ちすくむしかない。
幸せな気持ちで読むことが出来たのも
この本を読んだ効果だと思えてくる。
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