はじめは表紙デザインの美しさに惹かれ手に取ったこの本。
しかし、その内容もまた美しいものだった。
作者の実話ということだけど、誰も病気にならないし、死んだりしないのに生命の美しさ儚さを教えてくれる。
時間の移ろいに涙する。
内容は確かに特殊かもしれない。
作者は女性の心を持った男性として生まれたのだから。
しかし、全編通して根底に流れる普遍的な愛は、たくさんのことを呼び起こしてくれる。
自分の過去の恋や家族、友達、輝いていたあの日。
「私が夢見た『優』」というタイトルの意味を知った時、涙が止まらなかった。自分の大切な人をもっと大切にしたくなった。
各章タイトルの付け方もすばらしい。
デビュー作といえど、文の端々に作者の文章力、構成力、表現力の「力」を感じる。
そして、この本は本編最後の一文のために、書かれたものではないだろうか。
「泣くための本」ではない。けれど、私は号泣した。
自分にも確かにあった輝かしい時間を思い出させてもらったのだと思う。陳腐な表現かもしれないが、生命の、愛の、美しさを。
近年稀にみる、「魂」が込められた珠玉の一作。