本書は、これまで狩野永徳の若書きの屏風を発見し、伊藤若冲研究に新機軸を盛り込むなど、日本近世絵画史において数々の発見をしてきた同志社大学文化情報学部教授の狩野博幸氏による新刊です。
「御所参内・聚楽第行幸図屏風」は個人蔵ということでその来歴がよく分からないのですが、確かに書かれているように、この屏風は豊臣秀吉が造営した「聚楽第」へ、時の後陽成天皇が、1588年(天正16)4月に行幸する様子を描いたものでしょう。それと並行して、後陽成天皇へ参内する秀吉の行列も描かれている点が貴重です。狩野氏が書かれているように、「『聚楽第行幸記』の記述を詳細に裏付ける初めての絵画作品」というわけですから、その値打が計れます。
御所参内の主として秀吉を描いたものであるのは牛車の桐紋の検証過程から比定しています。希代の美術史家の説ですし、実に魅力的な展開です。
また、この屏風は各縦156.3cm×横358.4cmの六曲一双屏風で、完全な形で残されていたのは、美術作品としてだけでなく絵画史の解明において貴重な資料としてこれからも取り上げられることでしょう。
「探幽縮図」にある「聚楽第行幸図屏風」の他、聚楽第を描いた絵画が少ないものですから、比較検証するのが難しいわけですが、本書の解説に書かれた実証研究でそれも少しずつ埋められると思っています。
本書の内容です。実に魅力的な検証過程が記されています。
第1章 御所参内・聚楽第行幸図屏風とは その意味と重要性
第2章 何が描かれているのか 屏風細見(建物、行列、見物人、行きかう人びとの風俗、働く人びと、子どもたち)
第3章 時代によって聚楽第はどう描かれたか その他の聚楽第屏風との比較検討(『聚楽第行幸図屏風』(堺市博物館蔵)、『聚楽第図屏風』(三井記念美術館蔵)、『洛中洛外図屏風』のなかの聚楽第、廃墟としての聚楽第)
第4章 屏風に描かれた人物は誰なのか いつ、誰が描かせたのか
第5章 誰が描いたのか 絵師の謎