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秀吉と利休 (新潮文庫)
 
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秀吉と利休 (新潮文庫) [文庫]

野上 弥生子
5つ星のうち 4.0  レビューをすべて見る (2件のカスタマーレビュー)

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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

勢威並ぶものなき天下の覇王秀吉と、自在な境地を閑寂な茶事のなかに現出した美の創造者利休。愛憎相半ばする深い交わりの果てに宿命的破局を迎える峻烈な人間関係を、綿密重厚な筆で描き切る、絢爛たる巨篇。 --このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。

登録情報

  • 文庫: 457ページ
  • 出版社: 新潮社; 改版 (1969/09)
  • ISBN-10: 4101044023
  • ISBN-13: 978-4101044026
  • 発売日: 1969/09
  • 商品の寸法: 15 x 10.6 x 1.8 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.0  レビューをすべて見る (2件のカスタマーレビュー)
  • Amazon ベストセラー商品ランキング: 本 - 247,423位 (本のベストセラーを見る)
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By yukkiebeer #1殿堂 トップ50レビュアー
形式:文庫
 天下の茶道家であった千利休がなぜ秀吉の命によって腹を切らねばならなかったのか。本能寺の変以後の日本史の巨人二人を描く長編小説です。

 野上弥生子の選ぶ言葉遣いは特殊な節回しが多く見られて、私には決して読みやすいものではありませんでした。平成の世の日常では必ずしも多くの人に使われるわけではない言葉をわざわざ選び取っているのですが、それが往々にして文学的で耽美的な節回しというよりは、少なからずこなれていないという印象を与えずにはおかないものであるような気がしてなりませんでした。

 それでもこの400頁を越える歴史小説を最後まで読ませたのは、利休の死の謎に対して野上弥生子が与えた答が、政治策略的なものというよりも、秀吉のあまりに人間くさい利休に対する複雑な思いに発しているものであることが少しずつ見えてきたからです。

 これはひょっとするとシェークスピアの「オセロ」と大変良く似た構図をもった物語なのではないでしょうか。
 秀吉がオセロ、利休はその妻デズデモーナ、そしてイアーゴーは石田三成です。
 あまり詳細をここで記すことは控えますが、秀吉の次の心情が、利休への複雑な思いをよく表しています。
 
 「あの憎く、腹の立つ、しかもかけ替えのない、そう思うことによっていっそうこころの惹かれる、それでもなお憎く、腹のたつものと完全に絶縁するには、殺してしまうほかはない」(416頁)。

 利休にあえて詰め腹を切らせた秀吉。その自分でも制御することがままならない思いの発露は、現代人にも共通するものです。

 一方で利休が次のように吐露する気持ちにも目がひかれました。

 「人ひとりの御機嫌がどやこうと、それのみを気にして暮らすのには、私もちと草臥れました」(353頁)。

 世知辛い今の世に生きる私の心にもとてもよく寄り添った言葉です。

 人の世の変わることのない姿を見た思いがしました。
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8 人中、8人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By Duncan
形式:文庫
この作品は決して難解ではないが、独特の硬質な文体は、はじめ、斜め読みを許さないある種の圧迫感を読者に感じさせる。しかし、読み進めるうちに、利休という歴史上の人物は、日常生活のさりげない細部と心理の描写のなかでまざまざと造形され、利休とはまさしくそれ以外の人ではありえなかったろうと読者は確信するに至り、硬質な文体から感じた当初の圧迫感は、実は著者の尋常ならざる作家魂の厳しさに他ならなかったことに気がつく。この小説の中には、黙読するうちに思わず朗読して確認せずにいられないほどに格調高く、悲劇的な描写が数多くある。このような小説はそれほど多くはない。

権力への阿諛と矜持に引き裂かれる自我は、この作品だけでなく「迷路」のテーマでもあり、時代を問わず、常に私たちの矛盾でもある。野上弥生子という、戦前、戦後の日本社会を誠実に見届けた強靱な知性によって始めて可能な傑作というべきであろう。
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