人生を福袋になぞらえて描く八つの連作短篇集。
開けてみるまで何が入っているのかわからない。
福袋の「福」の字になにやら期待をかけ、手にはしてみたものの……。
まったく、これは人生そのものではないか。
普通の人々の日々を、その日々のなかで起こるささくれのような
できごとを、絶妙なダーティーさで切りとっているのが
角田さんらしい作品だ。
しかつめらしく「なぜ生きる?」というような問いかけは一切ない。
煩雑な日常のなかでもがく人の暮らしをざっとなぞり、
苛立ちやのめりこんでいく気持ちや、相手との齟齬を浮き彫りにするのだ。
時には笑いも涙も愛もレリーフのように刻まれた物語。
しかし、人生はまあこんなもんだよ、なんていうおざなりな目線はない。
そこが、角田さんらしい。
あまり好ましくない状況に遭ったとき、人が抱える諸々の逡巡を描いて
リアルだ。その心から思いもよらないことどもが見え隠れする。
囚われていた心が泳ぎ出す瞬間がある。
そこがおもしろかった。
「イギー・ポップを聴いていますか」「白っていうより銀」の2篇がとりわけ
好きだった。