福知山線脱線事故時、仕事に向かうため一両目に乗り合わせていた著者。鉄道ファンでもある著者が、車内であまりのスピードに明確に脱線を予感し、数メートル先にいるはずの運転士を見ようとしたそのとき、車体がふわりと進行方向に向かって左側に傾いた…。事故の瞬間や救助作業のリアルな描写は、そのときその場に居あわせた者だけが語れる「真実」だ。そして、阪神・淡路大震災の教訓から生まれた瓦礫下での医療や各自治体の連携救助作業が、彼を救った。
技術畑の人間でもある著者が強烈に感じたJRの脆弱さ、今後の安全性への疑問、そして、マスメディアの人間であると同時に被害者であることの矛盾などもつづられている。そして、運転士はなぜああいう行動をしたのか?という当然すぎる疑問も…。事故前、回送運転時のあまりに不可思議な運転内容を改めて思うと、深い闇を見るようでゾッとさせられる。
著者が味わわざるを得なかった一つのあまりにも長く強烈な経験を、まるで2時間半の間に一気に追体験した感じもあり…読後、長い間眠れなかった。