福沢諭吉を巡る様々な人物を配置してエピソードを紹介している。極め付けは、福沢が創刊した日刊新聞『時事新報』に発表された「脱亜論」が福沢の執筆でなく、従って福沢はアジア侵略主義者ではない、とするものである。ところが、その根拠が、平山洋『福沢諭吉の真実』というのだから、お話にならない。平山洋『福沢諭吉の真実』は、安川寿之輔『福沢諭吉の戦争論と天皇論』(2006年)によって、インチキ本であることが完璧に論証されている。金均玉に関する記述も、史実からはかけ離れている。
安川寿之輔『福沢諭吉のアジア認識』(2000年)、『福沢諭吉と丸山真男』(2003年)、『福沢諭吉の戦争論と天皇制論』(2006年)によれば、福沢諭吉は、「典型的な市民的自由主義者」などではなく、すさまじいアジア蔑視・アジア侵略主義者であることが論証されている。丸山真男が「創造」した「福沢諭吉=典型的な市民的自由主義者」説はもはや過去のものである。史実を踏まえた福沢諭吉論でない本書は、新たな「福沢諭吉伝説」の捏造であるといわれても仕方がない。