20年以上にわたって、チェルノブイリに関わり続けた著者が、
真正面から福島原発事故に取り組んでいます。
ジャーナリストらしく、原発被害のひとりひとりの声をていねいに
聞き取り、記述しています。
事故のため避難した人、林業をなりわいにしている人、農家、原発作業員の人たち。
さまざまな人の声が、この本のなかに鳴り響いています。
そのなかで、印象に残ったのは、福島から避難する人を取り囲んで、「卑怯者」と
ののしらざるを得なくなる人たち。家族のなかで、福島の地を去る者と残る者と
の関係を引き裂き、双方に深い傷を残してゆくという悲惨な状況。
放射能は、人間の体を蝕むだけでなく、人と人との間に修復しがたい亀裂を生み出します。
著者の医療者に対する不信の根深さにも驚かされました。
「放射能から身を守るということは・・放射線医学の権威者たちから身を守ること・・」
などの記述に、これまで医療者に裏切られてきた著者の体験がにじみ出ています。
福島原発を考えるときに必須の書物になるでしょう。