一番衝撃的だったのは、即発臨界という現象についての記述だった。
インターネットで、海外の技術者で福島第一原発の3号機の爆発は臨界によるものだと
言っている人がいるらしいというのは知っていた。
ただそのときは、海外では大げさなことを言う人がいるのだろうくらいに考えて、特に注意しませんでした。
今回書籍の形で上記の即発臨界という現象の解説を読んで驚いたのには主に2つ理由があります。
1つは、アメリカではどうやら研究所で即発臨界の実験を研究所で実施していて、
原子力発電の安全管理の教育現場(研究者レベル)で解説しているらしいということ。
もう一つは、燃料プールは正常な水位と燃料集合体相互の位置関係が充分な余裕が無い場合、
わずか0.1秒で即発臨界に成り得るということ。
原子炉の安全性ばかりに目が行きがちですが、燃料プールにも潜在的な危険性があると改めて認識出来ました。
ただ、もちろん水素爆発であるか即発臨界であるかは今のところはよくわかりません。
圧力容器に水素が充満しているため、水素爆発の危険性は今もこれからも恒常的に存在するという記述も
非常に気がかりです。
マーク1型の格納容器が容積が不十分であること、
サプレッションプールで圧力抑制効果が発揮出来ない可能性があることなどは、
元日立系技術者の田中三彦の記述や、
NHKのETVに出演していたデール・ブライデンボウの証言と重なっています。
新鮮だったのは、福島第一のメルトダウンの主原因を
日本政府や東京電力が主に電源喪失と非常用復水器の捜査ミスで説明するのに反して、
著者は冷却ポンプの水没で説明している点です。
元々岩波新書の「原発を終わらせる」で田中三彦氏が
非常用復水器は電源無しで起動出来るが動作時間は限られていると記述していたので、
耐水性の無い冷却ポンプが水没すれば海水による冷却が不能になり、
電源があっても無くてもメルトダウンに向かっていくという説明は説得力がありました。
著者は原子力発電の元技術者としては非常に高い地位でキャリアを終えたようで、
最後は原子力関連の企業で副社長をしていたということです。
そのため、原子力発電のプラント設置のコストにも精通しているらしく、
「原子力発電は安価に設置可能」だが、
「安全で安価な原子力発電は不可能」と明言しているのが印象的です。