二次制約者と接触し謎の本質である時間犯罪の核心へと迫って行く人類の活躍を描く大長編SFスペース・オペラ宇宙英雄ローダン・シリーズ第177巻。本巻の執筆者は、若手とベテランの絶妙の競演エーヴェルスとダールトンです。太陽系帝国の前に漆黒の球形船ハルト人の超物理学者ピナル・アルトが率いるコマンド部隊が応援に駆けつけた。
『超空間の孵化ステーション』H.G.エーヴェルス著:USOスペシャリストのペリシュ・モカルト大佐はハルト人の助けを借りて二次制約者のバラトロン基地への侵入作戦をブリーに進言する。いよいよ守勢から攻勢に転ずる時が来たとの確信を胸に抱きながら。『禁断の時間実験』クラーク・ダールトン著:人類とハルト人の共同作戦が功を奏し、二次制約者アセル・キンを捕虜とし尋問するが共生体が毒素を体内に注入し命を奪う。アセル・キンは死の間際に最近ヴェガ星系近傍で時間犯罪をキャッチした事実を明かす。ブルは直ちに第六惑星ピゲルを調査すべく、テラの新造艦《ワシントン》を急行させる。
後半で《ワシントン》艦長ヒレンデルはアコン人の卑劣な時間実験の罠に掛かり、過去界の第二次世界大戦の激戦地スターリングラードへと送り込まれてしまいます。彼の地は著者ダールトンが実際に捕虜となった青春時代の戦場だそうです。故松谷健二氏のあとがきは、音楽と絵画の嗜好のお話です。氏自身は音楽偏重人間で両者に払う関心の割合は四対一ぐらいであるが、最近傾倒している十七世紀オランダの画家フェルメールについて、理由を言葉では言い表わせないが好きな物は好きなのだと述べられています。そして最後にシリーズ作者のひとりであるK.H.シェール氏の訃報(1991年9月)を伝えられ、合掌の一語で結ばれています。