著者のハラへの愛情が感じられますが、評者としては論があまりに共産主義思想を肯定しているように思います。あとがきにおいて共産主義は終わったという主張は貧者の前では説得力をもたないという主張をされていますが、今日の東西両ヨーロッパを比較すれば自ずからもう解答は出ていると考えます。またハラがチリで共産主義のため戦っているとき、同じ共産主義の名において東欧の、ソ連の芸術家が弾圧されていたという事実を見れは評者はハラを著者と同じように讃えることができません。むしろ軍政による弾圧が彼を浄化したとさえ思うのです。もし彼のその理想が実現したときも、彼は変わらずに民衆の友であったのだろうか、それとも東欧の左翼芸術家のように共産主義下の「宮廷歌手」に成りりはてただろうかと考えてしまうのです。