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それだけに、ラスト数十ページのあまりと言えばあまりに少女小説的で安易な解決には、正直、唖然としてしまった。これほどの手練の語り手でありながら、なぜクライマックスだけが出来の悪いファンタジー小説のようになってしまったのか。
エンターテインメントとしてのこの作品は、ある種の「お約束」に完全に則って書かれていて、その枠内では心地よくホラーを楽しむことができるようになっている。烏山響一というまず現実にはあり得ないキャラの設定や、いまどきの若い女性である律子が、「まあ、~~だこと」などと妙にクラシカルな言葉遣いをすることからも(ついでに言えば、大学生の捷が「~~かしらん」と不思議がる場面もそうだ)、そのことは透けて見える。
別に「お約束」の存在自体が悪いというわけではないし、物語に構成を与えるためには不可欠のものだとも言えるが、作者自身がそれに最後まで快く従ってしまった結果が、あの平板な最後の数十ページにつながってしまったのではないか。少なくとも、結末が全く別のものであれば、それなりに満足できる作品に仕上がっていたはずだと思うと、残念でならない。
最後に、熊野を舞台にしているということで手に取ったこの作品だが、実際には、ヤタガラス(熊野本宮の祭神)が重要な小道具として出てくるぐらいのもので、ほとんど現実の熊野とは無関係に成り立っており、そのことも弱点の一つになっているような気がする。
『球形の季節』『劫尽童女』『ロミオとロミオは永遠に』『ねじの回転』といった小説群に連なる物語だと思います。この系統の作品は、自分にはオチの解釈が難しかったり、「えっ、こんな終わり方しちゃうの?」とあっけにとられたりするのが常で苦手なのですが、この作品はそんな部分を差し引いても読むに値する面白さがあると思います。解けない謎が残ることも多い恩田作品ですが、この作品の謎は殆ど全部最後には解決します。ただちょっとかなり強引な気がしたので☆ひとつマイナスさせていただきました。
いつもにまして、恩田さんの作品の特徴である“映像的”な展開が、ぐいぐい引っ張ってくれます。夜中までかかって一人で読んだので、その怖さたるや、想像しないでおこう、しないでおこうと思っても、脳裏をよぎり、どっぷりと浸かってしまいました。
悪の権化のような烏山響一が、いったいどういうふうに化けるのか、このまま突っ走るのか、結末を知りたくて、一気に読み進みました。
律子と捷が、響一に招かれて行った、熊野の山奥にある“野外美術館”での出来事は、佳境に入ってくると、所々太字の台詞やら地の文やらが混ざりだして、それがこちらの想像力を、嫌でも掻き立てるのです。それも、事象だけでなく、人の心に染みついた誰にも見せたくない“陰”の部分を抉るように、そこが、ささくれ立つように、配されているのです。二人がいくつもの野外美術館を、巡らざるをえないように仕組んだ響一の企み。恐怖と、夏の山中の蒸し暑さと、出口のない不安感・・・等々が、一挙に押しよせてきて手に汗握る迫力でした。
ただ、最後はこう持って行かなければ、収集がつかないとも思いますし、悪や暗黒のエネルギーに凌駕されてしまっては、それはそれで、“こんなんでいいのか?”と、私なら思ってしまうのでしょうが、案外あっさりと、決着がついてしまうのが、ちょっぴり残念でした。
しかし、それを除いても、この迫力で、事細かに描かれた悪意の増幅し続ける世界は、ちょっと見物だと思います。人間のその部分だけを描ききる手腕は、さすが恩田さんだと思わせられました。
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