十の死があって一の生もないという神風特攻隊。その中で、全くと言っていい程成功せず、壊滅したのが神雷部隊と言われた人間ロケット爆弾“桜花”と一式陸上攻撃機の部隊である。本書の冒頭でショックであったのが、野中五郎少佐率いる第一次神雷攻撃隊が壊滅するまでの米軍のガン・カメラで撮影されたカラーフィルムである。
野中少佐が、作中でも神雷隊は成功しないと言い切り、作戦そのものが失敗するであろうと示唆した結末がこれであったかというのは、あまりにも残酷なショットとしか言いようがない。神雷部隊を含め、野中少佐が憤怒と悲しみを込めて「非国民と言われても」と軍上層部への批判と特攻作戦への憎悪の言葉は、評者としても言葉に出来ない。それは「外道の統率」と自ら言い切った大西中将への血の爪跡といっても過言ではないかもしれない。
奇麗事ではない戦争というリアリズムはそこにはある。いみじくも、桜花のコードネームが“BAKA”というのはアメリカの嘲笑というより、生命という軽視を行なった当時の日本人への蔑視であったのかもしれない。もしかしたら、野中少佐が自分の機体に吊るされた桜花に向って吐露した怒りの言葉であったかもしれない。