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著者は「神隠し」という事象を支えていた要因を、
(1)家人や村びとなど残された側、(2)失踪者側、そして、
(3)両者に共有されている共同幻想
に求めている。
さらに、それを加速する触媒として、「社会のやさしさ」が
あるという。
著者によれば、彼らは決して無知でもなく、非科学的でもない。
「神隠し」は、
失踪の「事実」と事実に対する「社会的解釈」の二重性の上に
成り立っているのである。
この二重性を意識しながら読めば、
本書の論旨展開は簡潔明解で、たいへん読みやすい。
失踪にはいろいろと事情がある。
実際のところ、現代でも失踪はなくなっていない。
失踪がなくならない一方で、「共同幻想」と「社会のやさしさ」が
失われてしまっている。
著者は、「現代的装いをまとった『神隠し』を創造する必要
がありそう」と結ぶ。
私が生まれた頃、日本は高度成長の真只中にあり、
テレビや新聞では、失踪者のことを「蒸発した」と呼んでいた。
「神隠し」という言葉よりは、科学的印象を付与した新語であるが、
しかし、依然として非科学的な表現であり、
そこに「社会のやさしさ」が残っていたように思える。
失踪せざるを得ない実情を打開することが理想だが、
それが困難であるならば、やはり、新しい鬼、山伏、狐、山姥に
ご登場願うしかない
本書はさまざまな神隠し譚を類型化しながら考察していき、
よくまとまっているし、
中世の厳しい社会の中で神隠しという形で
姿を消さざるを得なかった人々の苦悩についても言及している。
ただ一つ言わせてもらえば、何か新しい観点などはなかった。
収録されている話も一般的なものが多く、聞いたことのあるものであった。
すぐに読めるし、日本人と神隠しに関する入門書としては最適であろう。
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