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11 人中、9人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
奇跡的です,
By カスタマー
レビュー対象商品: 神聖喜劇 (第3巻) (光文社文庫) (文庫)
「神聖喜劇」と言う題名はまさに当を得ている。決してあからさまに滑稽な描写があるわけではなく、内容も所謂喜劇的なものでは決してないのだが、普通の場面、真剣な、真面目な(滑稽・喜劇とは正反対な内容)場面の中の一行で思わず笑うことを禁じ得ない。そのような箇所が幾度となくこの小説には現れる。大西巨人という小説家の文章力の賜、表現力の豊饒さと言ってしまえば簡単なのだが、近代・現代日本文学の名作と呼ばれるものを読んできた上で思ったことだが、表現力の豊饒さ、文章力の賜といったものだけでは決してこのような体験を読者に与えることは出来ないのではないだろうか。ではいったいなんなのかと問われても上手く答えられない。わからないことは「奇蹟だ」と言ってしまえばどうにかなっ!てしまうので、たぶん本作は奇跡的な書物だと思う。
2 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
少しでも長く、この世界にとどまりたいがために、毎日少しづつ読んでいる,
By
レビュー対象商品: 神聖喜劇 (第3巻) (光文社文庫) (文庫)
3巻目を半ばまで読んだところで感想を書きたくなった。徴兵され、陸軍の対馬要塞に配属された東堂二等兵。軍隊という日常の自由を極端に制限された場所に置かれると、与えられる情報は、わずかな断片にすぎなくなるし、挙動すべてに軍隊の決まりと習慣を強要される。 その行動と生活そのものが第三者には、滑稽にすら思えても、当事者が、軍隊内部で、滑稽を表明することは決して許されない。 まさに、神聖にして喜劇。この本の題名「神聖喜劇」とは、軍隊生活=内務班生活を表現する造語として、極めて秀逸な命名だ。 漢籍から左翼雑誌、文芸誌、民俗学に至る、あらゆる文献に精通している筆者の知性は、主人公の東堂二等兵の博識として作中に生かされ、かつ軍隊の規則の法解釈まで加えながら、実に多様な文章世界を横断しつつ、物語は進む。 冬木二等兵は何者なのか。大前田軍曹の発言の真意はなんなのか。隊内に巻き起こりつつある「事件」は、いったい何なのか。推理小説とは、もっとも遠隔にあるはずの、この小説は、実際のところ、読者である私の中で、どんな推理小説よりも、推理する楽しみと知的好奇心を引き起こす。 なんという形式。なんという文学なのだろう。この博識饒舌な文体に、類似点があるとすれば、作品の中に、多様な過去の文献を織り交ぜて進行する、中国古典文学か日本の古典文学なのだろう。少なくとも現代文学の範疇には、同一のものがない希少かつ特異な形式だ。 この作品を読み進みたい好奇心を自制し、少しでも長く、この世界にとどまりたいがために、毎日少しづつ読んでいる。読書にひたる陶酔を味わうことができる素晴らしい作品だ。この作品を読むことができる時間に、生きているなんて、私は、なんという幸福者なんだろう!
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