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神聖喜劇〈第4巻〉 (光文社文庫)
 
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神聖喜劇〈第4巻〉 (光文社文庫) [文庫]

大西 巨人
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

堀江中尉に喚問された東堂太郎は、片桐伍長が企んだ“思想上の嫌疑”を論破する。上官上級者によって仕掛けられる無理難題に対する“合法闘争”はつづく。「知りません・忘れました」問題にも一応の決着が―。一方、奇怪な“事件”の犯人と目されて窮地に立つ冬木二等兵の、思いがけない過去を知り得た東堂は、冬木救済のために「精一杯抗うべく」決意を固める。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

大西 巨人
1919(大正8)年福岡市に生まれる。九大法学部中退。新聞社勤務を経て、召集により対馬要塞重砲兵聯隊に入隊。45年に復員後は福岡市で『文化展望』を編集。47年『近代文学』同人。52年上京して「新日本文学」常任中央委員となる。72年同会を退会。戦争・政治・差別問題を中心に執筆活動を行っている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

登録情報

  • 文庫: 495ページ
  • 出版社: 光文社 (2002/10)
  • ISBN-10: 4334733891
  • ISBN-13: 978-4334733896
  • 発売日: 2002/10
  • 商品の寸法: 15.2 x 10.6 x 2.2 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 5.0  レビューをすべて見る (1 カスタマーレビュー)
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 あまりの面白さに、読み終えるのが惜しくなり、意図的に遅読している。
 対馬要塞を守る砲兵部隊に配属された主人公の東堂二等兵。驚異的な記憶力を駆使して、軍隊という日常が極度に制約された場所で、知力を発揮する。物語は、その山場にさしかかっている。

 軍隊に身を投じることで、己を終わりにしたい。そういう動機で入隊したはずなのに、東堂二等兵が、この極めて不自由な空間と時間の制約の中で、いきいきと個性を発揮している痛快を、この4巻目で味わうことができる。

 人間の思考の自由を再現したかのような、東堂の記憶再生の旅もまた楽しい。本筋を追っているかと思えば、過去に読んだ書籍、過去に思い描いた記憶、とめどなく連なっている、筆者の博識にも導かれて、まるで智の山脈を歩いているようだ。

 遅く読むにも限度があるので、別の本に寄り道してでも、この世界とともに、少しでも長く過ごしていたい。そういう気持ちにさえなっている。読んでいる時も、読まないでいるときも、この本が描く世界とともに過ごせる幸せ。そういう体験を味わっている。幸福である。

 東堂二等兵。彼は戦争にも、軍隊にも積極的に加担するつもりはない。
 それは、そうなのだが、軍隊という「神聖なくだらなさ」で満ちているはずのその場所。そう思いながら、東堂二等兵が惹かれてゆく、38式野砲への美意識。教練する、彼の存在そのものを心ひそかに認め、同僚にも悟られない心の中で、心酔してしまう東堂。大前田軍曹の美しいとも思える野砲操作。そういう心情を告白するくだりでは、今はもう、永遠に失われた時間のことを、東堂二等兵と同じように回想し、理不尽な日常の中にさえ、美を感じる時間があるのだと、強く共感する。

 東堂二等兵の大前田軍曹に対する撞着は、いつか伝わることが、あるいは、同僚の誰かが見抜くことがあるのだろうか。

 38式野砲の2番砲手として躍動する教官・大前田軍曹の所作に美を感じてみたい。読者たる私は、文字による再現でしか味わうことができないだけに、おそらくは、それを現実に視認した著者を、羨ましく思うのだった。
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