霊界、過去生、カルマなどと聞くと、どうしてもおどろおどろしいイメージがつきまとう。
昨今の流行の、軽い調子のスピリチュアリズムを連想してしまう方も少なくないのではあるまいか。
しかし本書は、そういった類の発想を軸に展開される作品群とは、完全に一線を画す。人類の精神現象、
生命現象を、確固たる学問的見地に立って解き明かそうとする、地に足のついた論理的な作品である。
厚みある知識と深い見聞を総動員し、著者の全身全霊をかけて創り上げた、魂の一品と評ずるにふさわし
い小説である。美しく、才能にあふれている。だが一方で、重い宿命をひしと背負い、運命を力強く生き
抜こうとしている。そんな登場人物たちの魅力と輝きが、ストーリー全体を華やかに彩り、さらに物語を
雄大にしている。フィギアスケートやコンピューター将棋などの場面も大変心楽しい。旺盛な知識欲を
満たしたい方はもちろん、季有なSF小説を楽しみたい方も、いろんな楽しさを呈してくれる、
希有な力作である。