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11 人中、11人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
「神秘の夜の旅」とは何か?,
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レビュー対象商品: 神秘の夜の旅 (単行本)
本書は、批評家である若松英輔氏の、『井筒俊彦:叡知の哲学』に続く第二作です。『神秘の夜の旅』というおしゃれなタイトルがついていますが、中身は硬質な越知保夫論です。 井筒俊彦論と同様、評伝的要素と哲学的要素が絶妙に絡まり合いながら論述が進んでいます。 評伝的な側面に関して言えば、越知保夫のみではなく、小林秀雄・井筒俊彦・須賀敦子・中村光夫・中野重治といった近代日本の文学や思想を彩る魅力的な人物との関わりが、非常に丹念な調査に基づいて紹介されます。これらの人物に馴染んでいる人にとっても驚かざるをえないような新鮮な情報に充ちています。 ですが、本書の魅力はそれには尽きません。単なる思想史的・文学史的な書物ではないのです。 丹念な調査に基づいた歴史的な「時代」の分析に基づきつつ、かつ、それを超えて、「悠久なる永遠の今」の次元が指し示されているのです。若松氏の独自の分析を通じて一堂に会することになった越知保夫・小林秀雄・井筒俊彦などの言葉は、個人を超えた宇宙的な対話の場へと読者を導いていきます。 若松氏によって取り上げられている著者たちには、一見した相違を超えて、或る共通点があります。それは、彼らが、狭い意味での「自己表現」を目指した人物ではなく、自己を超えて自己を生かしている深い「実在」からの「呼びかけ」に応えようとした人物だということです。そのような構造が、単なる「宗教」に還元されないような仕方で、具体的な文学作品や芸術作品に即しながら説得的に示されています。 このような若松氏の論述を読み進めると、読者は、いつのまにか、自らもそのような「実在」からの「呼びかけ」に触れられ、「宇宙的な対話の場」へと導き入れられていることに気づくはずです。そして、「我々自身をこえた或る神秘が万物に意義を与えている真実の世界」を、いつのまにか垣間見ている自分に気づいてほのかな驚きを覚えること、間違いありません。それこそが、「神秘の夜の旅」に他ならないのです。 そのような意味において、本書は、越知保夫という人物を既に知っている人にとっても、まだ知らない人にとっても、それぞれに多くのものを得ることができる、稀有な書物です。
5 人中、5人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
魂の旅への誘い,
By きりん "きりん" (東京都) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 神秘の夜の旅 (単行本)
越知保夫を追っていく道筋は、筒井俊彦、中村光夫、小林秀雄、須賀敦子ら日本近代の文学者たちのみならず古今集にもさかのぼり、ガブリエル・マルセル、チューホフ、ダンテ…さらにはルオーやゴッホなどの画家も現れ、魔法の絨毯に乗って時空を超えた旅に誘われたよう。本来文学とはそのようなもので、作者の目が、魂が捉えたものは、作者一人の創作として完結するものではなく、文化や時代を超えた網の目のような繋がりのなかに存在する。そして読まれることによって(読者の存在によって)はじめて完結する。世界は昼と夜とで出来ている。目に見える世界と目に見えない世界はお互いを支えあって全体となる。文学は生者も死者も過ぎゆく時もすべてが共時的に行き交うことができる魔法の時を紡ぐ。これは文学者越知保夫の評伝なのだけれども、読後には、人・人の営みに対しての真摯で温かな想いに包まれる。豊穣なる見えない世界が、見える世界に生きる私たちを支えてくれている。これに気付くことには、日々に見えてくるもの、感じられることの質すら変えてしまうパワーがある。見えない価値を伝えてくれる文学(もっと大きくいえば芸術)の大切さをあらためて想う。これを開かれた扉として、越知保夫の著作集を読んでみるのもよさそうだ。
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