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神的批評
 
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神的批評 [単行本]

大澤 信亮
5つ星のうち 4.0  レビューをすべて見る (5件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

自己を問うこと。問われること。他者に開き続けること。開かれ続けること。思考を徹底化・無限化していくことで、人間はどこまで行けるだろうか―小林秀雄に始まる文芸批評の新鋭が、崇高への言葉を刻みつける。今この時代に私たちの生き方を問う、21世紀の批評は誕生する。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

大澤 信亮
1976年東京都生れ。文芸批評家。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。2007年「宮澤賢治の暴力」で第39回新潮新人賞“評論部門”受賞。『神的批評』は初の単著である(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

登録情報

  • 単行本: 253ページ
  • 出版社: 新潮社 (2010/10)
  • ISBN-10: 4103278110
  • ISBN-13: 978-4103278115
  • 発売日: 2010/10
  • 商品の寸法: 19.4 x 13.8 x 2.6 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.0  レビューをすべて見る (5件のカスタマーレビュー)
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『神的批評』には期待したのだが、私は間違っていた。本書もまた90年代以降の象徴界の機能不全という症状を示す症例に過ぎなかった。
「自分を愛するように他者を愛せ」という命法は自と他を等値しており、非対称性が消去されている。「自分が自殺するようにおまえ(たち)も死ね」と言い換えることもできる。それこそは秋葉原事件の犯人の精神でもあるだろう。

誤解を恐れずに云えば、生きたい奴は生き、死にたい奴は死ねばいい。ただそれだけのことだ。おかしな共同性を持ち出すことはかえって危険だと思われる。しかも、その共同性たるや全生物にまで拡張されかねないとは……。私はオーガニックな全体性を拒否する。「愛」という想像的原理を有機的全体性にまで拡張適用させようとするのは、とりもなおさず象徴界の機能不全を示す症状に他ならない。そこからジェノサイドに至るまでの距離は意外と近い。

「私たちの究極的な使命は、自分を心から愛せるかどうかにしかない(本書p173)」このような信じ難いほどナイーヴな言葉は少なくとも私には受け容れがたい。勝手に「私たち」などと書かないでもらいたい。「あなた」と「私」は全く別のそれぞれに独立した人格なのだ。むしろ、私が共感を覚えるのは大澤の師匠にあたる福田和也の次の言葉である。「人を殺すかもしれないし、殺すだろう」。

身近に喰うや喰わずの農民がいるのに、肉食云々を真剣に考えることができるという事実こそ、宮澤賢治の特権的立場を示している。彼には良心の疚しさがある。彼は自らに対してニーチェが批判する意味での僧侶として振る舞う。
宮澤賢治におけるニーチェ的僧侶性(生に反すると言う意味での悪しき「死の欲動」)を共有せよ、といわれる理由はない。食物連鎖における人間の位置を強調することは、社会的格差や階級といった問題を隠蔽する。生物学的思考が社会科学、政治、法といった象徴的なものを隠蔽する。賢治自身にとっては自らの後ろめたさを忘却することができるのだ。

イエスの刑死を自己犠牲と解釈することはパウロ=護教的詐術である。ローマの官憲による殺人という政治的なものの存在が隠蔽されてしまう。あるいは出来事(刑死)の物語化(自己犠牲)といってもよい。
さらに崇高な自己犠牲の精神を他者に共有することを求める動きは宗教共同体の護教的論理に摩り替えられる。かくて自己犠牲は権力によって強要されるに至るのだ。実際、「雨ニモ負ケズ」に代表される宮澤賢治の諸作品は前線の日本兵に携えられるに至った。

こうして見てくると、宮澤賢治が極めてパウロ的護教的人物であることがわかってくるだろう。ニーチェ『道徳の系譜』岩波書店・ちくま書房・光文社や田川建三『イエスという男』作品社あたりを本書 と併せて読むと面白いかもしれない。
私は一度たりとも宮澤賢治の欺瞞に騙されたことはないので、最初から彼の暴力性を暴くことには興味が持てないのだ。

「神的批評」という題はベンヤミンの「神的暴力」を想起させるのだが、むしろ本書に一貫しているのは護教的=法維持的な暴力である。
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24 人中、16人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By ソコツ トップ100レビュアー VINE™ メンバー
「神的」と、ややものものしいタイトルを掲げた著者のデビュー批評集。その意図するところは色々と解釈できようが、人間を人間たらしめてる条件としてあるサムシングに宗教的な次元を感じ取り、それを「神」の顕現する場として理解した上で、その次元においてクリティカルな思考と創作を展開しているのだろうと思う。発想も文章も非常に魅力的で、魂がこもっており、ぐいぐい読ませる。
内容は、大きな注目をあびた宮沢賢治論に加え、柄谷行人論、柳田国男論、北大路魯山人論の4本からなる。いずれにも通定しているテーマとして、暴力・殺す事、他者・私、共に生きること、という三つの軸があるように思える。とくに賢治論と魯山人論において提示される、他者を殺す者としての私を究極的に反省した果てに見えてくる光景、その狂気とすれすれの論理の導出の仕方には圧倒されるものがあった。私が他者を苦しめ、奪い、殺し、食べながら生きることの現実と意味を、日常的に全身全霊で思索しながら構築された真摯な言語がそこにはある。
著者のブログによれば「僕は、『バガボンド』や『ジョジョの奇妙な冒険』や『HUNTER×HUNTER』や「ニコニコ動画」や「2ちゃんねる」よりも面白い批評を、本気で目指しています」とのこと。また本書の中でも著者の少し気負い気味な「批評(家)宣言」が行われている。その志には大いに共感するところで、またこの作品を読んだ限りでは、そこに「文芸批評」の新しい可能性を十分過ぎるほどに見て取ることができる。とにかく面白かった。
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3 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
___ 2011/11/20
『神的批評』は第二十四回三島由紀夫賞候補作である。
五名の選考委員による該作選評の一部を『新潮』2011年7月号から引用。

辻原登
「粗削りなレトリック、飛躍の多いロジックは批評において瑕瑾とはならない。」

川上弘美
「その先は、どうなっているの、どうなっているの。と、期待したとたんに、
ふいっと作者がはしごをはずしてしまうような印象を持ちました。」

町田康
「その一方で、ここをジャンプしてしまってよいのか、と思われる部分があり、
もっとネチネチしてもよいのではないか、と思った。」

小川洋子
「途中の展開に時折疑問が湧いた。思考が深まりそうになると、すぐにさまざまな
人の引用が出てきて、論点が微妙にずれてゆく。結果、タイトルに掲げられた中心
となるべき人物は霞んでしまい、妙にセンチメンタルな感慨だけが残される。」

平野啓一郎
「人間にはどんな「希い」も許されていない、自分も他者も愛することが出来
ない、というのは、著者の飛躍である。」「本作には、腹を据えて論理を徹底
させるべき箇所に限って、感傷的なレトリックで誤魔化したり、別のテキスト
の引用にズルッと横滑りしたりするところがある。」
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