東京のとある大学に通う学生たちのキャンパスライフを描いた短編連作集。
作家の的確な描写のなせる技だと思うが、「大学のサークルの勧誘とか、語学の授業の雰囲気とかって、こうだったこうだった!」と、とにかくなつかしくなれる場面が多い。しかし、何より心をうったのは、ここに描かれた青春の姿である。ここで描かれている青春は、「体育会でみんなで力を合わせて何かの大会に勝つことができた!」とか「グループ恋愛して三角・四角関係になって…」とか、というものでは全然ない。むしろ、そういう青春には縁がないんだよねぇと思う人間たちの青春が描かれている。よって、そこに描かれている青春は、地味だったり、どこか屈折していたり、煮え切らなかったりする。このあたりがこの本の好悪の分かれ目だろうが、ハマる人にはめちゃくちゃハマるはず。そして、作者の根底には、そうした煮え切らない青春への愛があり、それがまたこの本の魅力になっている。