前巻から二ヶ月という、このシリーズとしては異例の早さで刊行されたこの巻は、いつになく「終わり」を予感させるものでした。もともとこの作者は続き物のシリーズであっても一冊一冊の締めをきっちりとつくる傾向があるのですが、それとは別に、この8巻は1巻と3巻で語られたシリーズの根幹を成す最重要エピソードが一年を経て語り直され、完結させられます。短編集の形態をとりながら、大きな流れを感じさせる見事な構成は、同作者の『さよならピアノソナタ3』を思わせます。
これまでの巻で、彩夏のファンはさぞかしやきもきしていたことでしょう。ヒロインの一人として登場しながら、もはやメインの座は完全にアリスに奪われ、普通の女子高生であるがゆえに血なまぐさい事件が続くと物語の表舞台からは遠ざけられてしまうために出番も少ない。けれどこのシリーズは暴力や犯罪が吹き荒れる世界を描くだけのしろものではありません。彩夏の象徴する、優しくて暖かでささやかな世界もまた、神メモの大切な構成要素なのだと、強く印象づけられた巻でした。同時に、人気キャラの四代目についてもかなり掘り下げられた巻となっており、それらがすべて結実し、同時にエンジェル・フィックス事件の幕引きとなるラストシーンは、1巻のそれに匹敵する映像美を備えています。
語り残されていたことはこの8巻でほとんど昇華されました。おそらく、シリーズは終わりに向けて動き始めたのでしょう。一抹の寂しさを感じつつも、この素晴らしいシリーズが最終的にどこへ向かうのか、楽しみに待ちたいと思います。