この作者はどんな作品でも実に周到に伏線を張るのですが、ひょっとすると前もって伏線を用意しているのではなく、後からそれとなくつじつまを合わせているのではないか、と思わされることがあります。
その疑い(?)が最も濃いのがこの三巻です。一巻で残っていた不透明な部分をすべて回収し、テツというメインキャラの過去にからめて驚くべき真相にまとめあげたのは見事としかいえませんが、さすがに一巻執筆の段階でこれらの伏線をすべて考えついて仕込んでいたとは到底思えないのです。
先付けなのか後付けなのかは作者のみぞ知るところで、できあがった作品が面白ければそれでいいのですが。
現時点で発売されているシリーズ六冊の中では最もミステリらしいミステリであり、非常に単純なフーダニットやトリックはやや切れ味不足ですが、その道筋の青春小説としての切実さに満ちた展開はあいかわらず胸を熱くさせてくれます。