「神様が創った試合」を読む。1年くらい前にスポーツ雑誌のナンバーの書評を読んでから、いつか読んで見たいと思っていた。
この本は1979年8月16日に行われた、夏の全国高校野球選手権大会「箕島対星稜」の一戦を振り返るノンフィクションである。
当時、わしは中学2年生でこの試合をうちのテレビで見た。この試合を1回のあたまから見た記憶がない。いや、見てたのかもしれないけど記憶に残らなかったのかもしれない。そう、この試合の印象はナイターの甲子園の風景である。最初見ていて一度、席をたって戻って来たときまだやってるのって印象が強い。そして、まだやってるのと思った試合はその後ものすごごく強い印象を残した。
この試合で特に強く印象に残っているシーンが二つある。一つは14回裏の箕島高校の攻撃、ランナー1、3塁サヨナラのチャンス。その時、3塁塁審がいきなり「アウト!」のコール。「いったい何が起きたんだー」多分、その試合をテレビで見ていた全国の人、甲子園球場にいた観客、そして、試合をしていた両校ナインの大半が何が起きたかすぐには理解できなかった。「隠し球みたいです」とテレビのアナウンサーのコメントでやっと理解できた。隠し球という言葉を聞いたことはあったが実際に見たのはこのときが初めてだった。今思えばこんな緊張した試合で隠し球をやろうなんて考える3塁手はよほどの大物かお調子者のどっちかなんだろうなーと思う。そう、これを見たからなのかうちの中学の野球部は春の公式戦で2度隠し球を成功させた。きっと全国の野球少年達が隠し球を憶えたのは絶対この瞬間からであった。
そして、もう一つのシーンは延長16回。表の攻撃で星稜高校が1点を取りその裏、箕島高校の攻撃も2アウト。そして、打席に入ったバッターが1塁ファールフライを打ち上げた。誰もがこれでゲームセットと思った瞬間ファールボールを追いかけていた1塁手が芝生と土の境目につまずいたのか、転んでボールを捕球することが出来なかった。この瞬間も何か不思議な感覚で見ていた。何となくぼんやりしたムードが漂う中、気を取り直したバッターが同点のホームランを打った。こんなことがあるんだなーと驚いて見ていた記憶がある。それに、箕島高校は延長12回にもツーアウト最後のバッターかと思われたバッターが起死回生の同点ホームランを打っているのである。当時の甲子園球場にはラッキーゾーンがあったとはいえ今の高校野球のようにホームランが多くは出なかった。こんな、ところで出るんだということにこの試合を見ていた多くの人が思ったに違いない。
試合は延長18回に箕島高校がサヨナラヒットで勝利した。今となってはどちらが勝ったということもぼんやりとしているが。カクテル光線に照らされた夜の高校野球の情景は今思い出しても不思議な光景であったと思う。昨年の早稲田実業と駒大苫小牧の延長再試合、松坂が力投した横浜対PL高校の一戦と伝説の熱戦がある。「箕島対星稜」がそれらの試合とどこかおもむきが違う気がするのは両校にハンカチ王子やマー君や松坂のようなスター選手がいなかったこと。その日の第4試合であったため夕方から始まった試合は夜の8時近くに終わり、夕飯を食べながら家族全員で見たということ。延長になってからナイターになったこ。そしてそれを教育テレビが中継してたということなどがなにか中学生だった僕に不思議な印象を今でも残している。
本当に当時、この試合を見た記憶がある人には「神様が創った試合」を読んでみるとまた違った感動が得られると思います。