最高。
もーーーーーーー最高です!最高でした!待った甲斐がありましたサリエルは相変わらず不埒千万と暴虐無人と傲岸不遜を掛け合わせた性格の俺様でかっこいいし、サリエルに虐げられるけなげなドジっ子のモモ可愛いし、コジは相変わらずアル中のどら猫だし(待て)でも今巻で一番がんばったのはやっぱりアマディアでしょうね。一巻はサリエルとモモを軸に展開しましたが、二巻ではダブルヒロインのもう片方アマディアがクローズアップ。
音楽家のの名門一族に生まれかつては将来を期待された神童、しかしあがり症を克服できず試験に落ち続け親にも見放された令嬢。音楽を目指すものなら誰をも羨む特別な才能に恵まれながらも、人前で弾くことができないという致命的な欠点に悩み苦しむアマディアの内面が非常にリアルに描写されて感情移入していました。
あざのさんの書くキャラは等身大の肉付けがされていて、個々の葛藤や悩みなどにひしひし共感できます。
俺様キャラで倣岸不遜な言動が目立つサリエルにしたところで、ひどく繊細な面をあわせもつ。アマディアに「音楽を楽しめ」と教えたサリエル自身、彼女の才能と自分の才能とを比較し、劣等感を抱いてしまう。
ぜんっぜん完璧な人間じゃない。突出したひとつの才能を除けば難のほうが目立つ。それでもサリエルを好きにならずにいられない。
不遜で傲慢でコンサートでは客の入りを真っ先にチェックするような卑小な性格、ギャラが少ないと文句をつける、目つきの悪さを隠すため伊達めがねをかける。一方で音楽にかける情熱と理想をめざす真摯な姿勢は本物で、「演奏する者も聴く者も同時に楽しめる音楽こそ最高だ」との信念を持ちながら、自分の音楽はしょせん大衆と時勢に迎合した「消費される音楽」ではないかと不安に揺れる。あーもうほんといいよサリエル、良い意味で人間くさい。すごいツボ。結婚して。……いや、結婚はしたくないけどファンクラブ入らせてください。
で、今巻ではサリエルと因縁浅からぬ男が登場。
「イドラ(偶像)の魔術師」の異名をとる敏腕プロデューサーでサリエルと喧嘩別れした元相棒、シャルマ。
こいつがまたいい性格してて……伊達にドSを名乗っていません。
第三話で音楽に絡め才能論をぶつところは圧倒されました。サドというよりは徹底してシビアなだけかもしれない。「才能は小数点を数えない」という言葉は非常に冷徹ですが、真実の一面を抉っている。説得力があります。彼女がめざしてるのはアートじゃなくてアーティストのところとか、これ、音楽の道をめざしてる人はかなり耳が痛いじゃないかなあ……音楽に限らず、創作だの何だの芸術系の進路をえらんだ人全般にあてはまりますが。
あがり症が克服できず人前での演奏は失敗続きのアマディアですが、幼馴染と腹を割って話し合って一皮剥けたのは嬉しい限り(人として大事なものもいくつか捨てたっぽいですが)とくに楽屋にもどってきたリジアに活を入れるシーンはすっとしました。よく言った、偉い!
「自分の音楽をめざす」というオリジナリティ追求論はアーティスト志望者ならだれしも持ち得るビジョンだけど、リジアのそれがいささか甘えに映ったのも事実。だからアマディアのお説教は痛快でした。サリエルに似てきたのかな……この師にしてこの弟子あり。
「音楽とは何か」「才能とは何か」「秀才と天才の差」などがダン・サリエルのテーマだと個人的には思ってるんですが、一方ですごくシビアな論理や価値観を語りながら、もう一方で現状に安住せず足掻くキャラへの優しいまなざしを忘れないのが読後感の良さの秘訣なんだよなあ……。実際に目に見え音が耳に聞こえてくるような演奏シーンは今回も健在。私もこんな文章が書けるようになりたい……。
今いちばんおすすめのラノベシリーズなので書店で見かけた方はぜひ手にとってみてください。