これはシェアードワールドノベルであるポリフォニカシリーズの一つ、ザ・ブラックの漫画版だ。
ポリ黒と称されるその作品そのものの解説を先に挟んでおこう。
ポリフォニカ世界には人間以外に精神生命体である精霊が存在し、彼らは一部の人が奏でることができる「神曲」を介して「人間の善き隣人」として、もう長い付き合いとなっている。
しかし実際には精霊が関わる犯罪も少なからず起きており、それを解決するために警察には神曲楽士と精霊のペアが配属される精霊課が組織されている。
ポリ黒はルシャゼリウス市警の精霊課に配属された、大男マナガと小柄な少女マティアのペアの物語だ。精霊が関わっているかもしれない事件が起き、二人がその捜査をするという流れで進んでいくが、推理ものというわけではない。
二人の捜査も警察らしい地道かつ堅実なもので、そうした生真面目な作りがポリ黒の味と言えると思う。
さて、ポリフォニカの小説は色別に各種出ているが、中でも黒が好きだった私にはこのコミックはとても楽しみなものの一つだった。
作画に米村孝一郎氏を起用したのも、氏の写実的で緻密な絵柄を思えば絶妙の選択と思え、期待が高まっていた。この黒の世界には、流行の可愛い絵を描く人は向いていないと思う。
実際こうして手に取り、読んでみると、改めてそう実感する。
美しい。
超然としたマティアもそうだし、無精ひげで馬鹿でかいけど目が可愛いというマナガも(ある意味)美しい。馬鹿でかいと言えばこちらもでかいクウォンタ・クルーガー4WDも、さすがは元軍用車という威容を私に初めて見せてくれた。
この本は表紙絵からして美麗そして緻密だが、そこで受けたイメージを中身は裏切らない。これは間違いなくポリ黒の世界を、そういったイメージ面でも忠実に映し出したコミックだ。
後書きによれば米村氏を選択したのは他ならぬ原作者・大迫純一氏ご本人とのことだが、これは大正解だったのではないだろうか。
ポリ黒が好きな人なら、この本は買いだと思う。
小説→漫画の流れだとストーリーが駆け足展開になっている作品も見かけるが、この本はそこも丁寧な反面、この1巻では最初の事件の解決にさえも至っていない。だがこの質の高さなら、次巻を待てるだけの期待と満足を得られるのではないだろうか。