古典と言われる範疇の作品を新訳で、しかも安価な文庫で読めるというのは嬉しい限りだ。ブッツァーティという作家は知らなかったが読んでみて損はなかった。22編の短編が収録されている。幻想文学というおもむきの作品、SF的なものなどどれも読みやすい。
表題はある村に現れた隠修士の元に毎日パンを運ぶ一匹の野良犬の話。隠修士亡きあと村をうろつき回る犬ガレオーネが、神を見た者、神の化身として村人たちを混乱させる。不信心で怠惰な村人たちはガレオーネに見られていることを恐れ、こぞって教会に通い始め、それまで横行していたあらゆる不道徳が村から消えた。あの犬さえいなければ・・と誰もが思い、事故に見せかけて殺害を企てるもガレオーネはなかなか死なないのだ。たった一匹の犬のために自堕落な暮らしを捨てた村人たち。
この他にも宗教色を色濃く出しながらファンタスティックな「天地創造」「風船」。まるで浦島太郎のような「呪われた背広」。ちょっぴり切ない落ちぶれた山賊の「護送大隊襲撃」。東西冷戦の終結の引き金になった「秘密兵器」の笑っちゃうけど皮肉なオチ。一番恐ろしいのが「七階」。どれも短いけれど読み応えがある。