神の正体についての仮説を得てから,世界中で次々と生じる異変と,
世論を誘導して狙い通りに日本社会を変革させる加古川の目的,
そして神の目的・・・と物語は急速に展開していく.
この種の盛りだくさんの小説は得てして消化不良を起こしがちだが,
この作品ではきっちりまとまっていて,感心させる出来栄えに仕上がっている.
物語全般を通じて中核となっているは,加古川という傑出した個性の魅力であろう.
神の意図を読み取る頭脳,大衆を誘導する計算とカリスマ,
自分の野心を達成するためには手段を選ばない非情さなど,ノワールな魅力に満ちている.
これだけのキャラクターをあっさり死なせてしまっているのがちともったいない気もするが,
そういうあっけなさも含めて神の不作為の表現なのか.
神は存在するが,尊敬に値しないという結論もなかなか面白い.
最後に登場するヨブ記の真相が,この長い物語を象徴しているかもしれない.