何かとお騒がせのドーキンス氏ですが、今回は生物学会ではなく、宗教全体を相手に回し、歯に衣着せぬ攻撃を繰り広げています。
もちろんこれは、彼が進化論を専門としているため、創造論などの教義と対立し攻撃を受けるからであり、すでに『悪魔に使える牧師』などで宗教批判を展開していました。
今回は邦訳で550ページになる大冊で、これでもかこれでもかと無神論の優位を主張し、相手がキリスト教、イスラム教に限らず、また原理主義だけを相手とせず中庸派、穏健派も含めて相手取っています。
その理由は<第8章 宗教のどこが悪いのか? なぜそんなに敵愾心を燃やすのか?>と<第9章 子供の虐待と、宗教からの逃走>に明言されています。
p448 「宗教上の信念は、それが宗教上の信念であるというだけの理由で尊重されなければならないという原則を受け入れているかぎり、私たちはオサマ・ビン・ラディンや自爆テロ犯が抱いている信念を尊重しないわけにはいかない。ではどうすればいいのか、といえば、こうして力説する必要もないほど自明なことだが、宗教上の信念というのものをフリーパスで尊重するという原則を放棄することである。それこそが、私がもてるかぎりの力をつくして、いわゆる「過激主義的な」信仰に対してだけでなく、信仰そのものに対して人々に警告を発する理由の一つなのである。」
もちろん、神の存在証明に対する反論や、道徳面からの宗教の必要性の有無など、宗教側からの攻撃(脅迫メールなどが掲載されていますが、信仰者からのものとは思えないほどグロテスクなものです)に対する緻密な反証にも多くのページが割かれており、最新の関係書籍からの引用も多いのでとても参考になります。
(この方面の引用では、バートランド・ラッセルのものは唸らされる秀逸ものがたくさんありました。アインシュタイン、カール・セーガンなどの言葉も深みがあり感動)
"アンチ・トンデモ"の最強版のような一冊ですし、信仰を持つ人々からすればはらわたが煮えくり返るようなところがあるでしょうが、ドーキンス氏はけっして人間否定でも科学万能主義でもなく、蒙を啓き限界を押し上げて、人間の歴史をより豊かにすること、そのために子供たちの精神を大事にすることを、心から願っているのだと思います。