アルトーは、あの苦痛の精神病院からパリに帰り精力的にノートを書き続けた。後期アルトーの始まりなのだが、この時期は、前期に比べまとまった著作を書いていないように思う。だから、本書に収められた2作品は大変重要なものだと思われる。とくに、「神の裁きと決別するために」は、アルトーが指揮をとり作られたラジオドラマの脚本である。もっとも、彼の肉声を聞くことが出来ればよいが(ぺヨトル工房より出版されたときはテープがあったように記憶しているが)、まず内容であろう。詩人であるために色々と言語的な制約が生じるけれども、それを言うよりも前に読むことだろう。それは、何かSF的な感じもするが、予言のような気もする。しかし、やはり「思考の不可能性」という根底的なアルトーのテーマは、ここにも流れている。
「ヴァン・ゴッホ」は、新訳であるから筑摩から出たものを読んだ人も、読んでいない方も楽しめると思う。
本書が出版されたことによって、アルトーの前期から、後期にかけてのある程度の著作がそろったようなので、一度著作集と、他の文庫を読むことを通し、直接アルトーの言葉を読むことで、日本人の新しいアルトー観が生まれてくるのではないだろうか。