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神の火を制御せよ 原爆をつくった人びと
 
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神の火を制御せよ 原爆をつくった人びと [単行本]

パール・バック , 丸田 浩 , 小林 政子
5つ星のうち 4.3  レビューをすべて見る (6件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容紹介

1940年、アメリカには、アインシュタインをはじめヨーロッパからの亡命科学者が多数いた。 彼らは核兵器の破壊力を知らないアメリカ政府に口々に訴える。「ナチスが核兵器を作っている! ナチスが核兵器を完成させたら大変なことになる!」
「原子爆弾を使うことにはならないとお考えですか」
「使うか否かにかかわらず、アメリカは原子爆弾をつくるべきだ。それもできるだけ速やかにね」
アメリカ政府は、彼らの声に押されるようにして原爆の開発を開始。若い女性科学者ジェーンや青年科学者スティーブは、原爆の開発・兵器として使用に反対する。
「核兵器の製造には加担したくありません」
「誰が好きでやるものか。悪魔の仕事だ。だが、ほかの悪魔が先に作ったらどうする?」
原子爆弾という最終兵器があれば、使わずとも戦争そのものを終わらせることができるかもしれない。そこに望みをつないで開発を進める彼らは1945年7月16日、ついに世界初の原爆実験を成功させる。
「やったぞ」バートは絶叫した。「やったぞ。我々は成功したんだ」
彼はスティーブの肩に腕を投げかけ、泣き笑いを始めた。
「新しい神の世界だ」バートはすすり上げた。「新しい天と地……みんな、これは黙示だ!」
「新しい時代には違いないが、果たしてそこは神が住む世界だろうか」スティーブは暗い気持ちで反問した。
原爆実験の成功を知った アメリカ政府は、日本への原爆投下を決定。
アメリカ政府に原爆を開発するよう働きかけてきたハンガリーの亡命科学者は、原爆の使用に反対する署名を集めるために駆けずりまわる。
「原子爆弾を使う必要はない。日本は必ず降伏する。すでにひざまずいている。日本人は誇り高い民族だから、無条件降伏なんか言い出しちゃならない。ただの降伏でいいじゃないか。それなら彼らの名誉が保てる。そうじゃないか? 戦争を終わらせることが大切だ。そうじゃないか?」
「投下はやめて、お願い」ジェーンは両手で顔をおおい、スティーブもまた投下をくい止めようと、ビラを撒いて日本政府に降伏を呼びかける。
1945年8月5日、ワシントンは蒸し暑い夏日だった。熱気を含んだ雲が上空に垂れこめていた。依然として日本から返事は来なかった。陸軍長官は特別警告を発し、さらに大量のビラをまいた。その日が暮れたが回答はなかった。真夜中に憔悴しきった長官は口を固く閉じた若い科学者のほうを向いた。「スティーブ君」声は穏やかだった。「やれることはすべてやった。研究所へ戻りたまえ」

恋愛・苦悩・スパイ・夫婦の確執……
原爆を作った人々の愛と葛藤を描いた問題小説。
被爆国に生きる我々は、この小説をどう読むのか!

内容(「BOOK」データベースより)

恋愛・苦悩・スパイ・夫婦の確執…原爆を作った人々の愛と葛藤を描いた問題小説。被爆国に生きる我々は、この小説をどう読むのか。

登録情報

  • 単行本: 416ページ
  • 出版社: 径書房; 初版 (2007/7/25)
  • 言語 日本語
  • ISBN-10: 4770501978
  • ISBN-13: 978-4770501974
  • 発売日: 2007/7/25
  • 商品の寸法: 19 x 13.2 x 3.4 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.3  レビューをすべて見る (6件のカスタマーレビュー)
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21 人中、19人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:単行本
 原題「Command the Morning」は旧約聖書「ヨブ記」38章12節からとられている。
 「ヨブ記」は、信仰篤く善人そのものであるヨブが神によっていわれない苦しみを背負わされる物語だ。地獄の底から抗議するヨブに対して神が応えた言葉が「それではお前は朝に向かって命令したことがあるのか?」というものだった。太陽も月も星も神によって創り出され、神の言葉ひとつで朝は夜にも昼にも転じる。どの人間にもこんなことはできない。神の前に人は無力で小さなものであり、善であることに安住する意味はない。人はただひたすらに神を畏れ、神に全身全霊を預けるべき存在である。こんなところが「ヨブ記」のメッセージかと思うが、その中の一文を引いて題名としたこの小説は、核兵器を開発した人間たちの神をも畏れぬ傲慢を描く意図であっただろう。
 小説中、科学者たちが原爆を製作したのは、ナチスが核兵器を開発し世界を破滅させるのを防ぐためであり、アメリカの核兵器保有が抑止力となって戦争を終結させ得る希望のためだった。日本にそれを投下することについては科学者たちはそれぞれの内面の倫理から反対をし、また葛藤をしていた。
 それでは誰が原爆投下の決断をしたのか。政治判断、軍事決断の責任はアメリカ大統領トルーマンにある。しかしトルーマンは言うだろう、原爆ができていたから使ったのだ、日本本土侵攻によって失われる50万のアメリカ兵の命を救うために、と。
 朝にむかって命令する準備は整った、では誰がどんな責任で命令を下すのか。小説は、このことをめぐる堂々巡りとも言える議論に、一方向、科学者たちの人間関係における決断模様を添えた点で優れていると思った。ひとことで言えば、登場する科学者たちは、夫婦において、恋愛において、「決断しない人々」として描かれている。ジェーンはスティーブとの愛を決断しないし、スティーブもまた然り、ヘレンはパーシーの腕に飛び込まず、バートはただ長年の妻モリーに甘やかされるだけである。ジェーンの初恋の人であったラーマンもまた、愛を選び取らなかった。
 そこでは、各々が決断しないことが愛そのものを不幸な、実りのないものにしている。その裏メッセージに通底されながら、日本への原爆投下の決断、あるいは「投下しない」という決断から、政治家も軍の高官も科学者も逃れようとする姿がこの小説に映し出されている。まるで、そこにはいない「誰か」に判断をまかせたような。
 決断しない愛があてどない不幸の穴に落ちていくように、責任のなすりあいの中で投下された原爆は恐るべき不幸をヒロシマ・ナガサキにもたらした。その決断のプロセスを戦後62年たって改めて考えることには大きな意味があると思った。
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17 人中、15人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
パンドラの箱 2007/8/27
形式:単行本
 ノーベル賞作家パール・バックの幻の小説ついに刊行! 欧米でベストセラーになった本書は、なぜ日本で出版されなかったのか。 被爆国に生きる我々は、この小説をどう読むのか! という本書の帯にひかれて購読してみた。特に最後の「この小説をどう読むのか」の一言は挑戦状を突きつけられているようで、スリリングである。
 物語は第2次大戦下、アメリカで原爆開発の「マンハッタン計画」に携わった科学者達の開発苦労と使用後の惨状をめぐる葛藤を描いたものである。いずれも当時実在したと思われる人物をモデルにしているが、その中でただ一人女性の科学者(架空の人物?)を登場させ、彼女に「原爆は使用させてはならない」と語らせている。これこそが作者の分身であり、本書の骨格を示すものである。今でこそ当たり前の主張であるが、本書が書かれた1959年、冷戦当時の世界情勢を考え、さらに開発国側の人の発言であることを考えれば、将来を見据えた識見であることが十分に判る。物語の前半は、原子物理学の専門用語や、男女間の恋愛感情などやや冗漫とも言える描写が続くが、後半はいよいよ広島・長崎にどのようなプロセスを経て投下されることになるのかという、すでに読者も熟知している史実への解明期待もあって、緊張感と共に一気に読ませてくれる。
 読後感としては、ドイツが降伏したとき原爆開発は失敗していたことが判ったから、その時点でアメリカも開発を中止してもよかったのではないかとか、あのとき主人公が中止していればとかいう「もしも」話を打ち消すことが出来ない。しかし、人類は「パンドラの箱」を開けてしまった。「神の火を〜」という題名も思索的である。一方、巻末で原子力の平和利用のことが少し暗示されるが、現今「原子力発電所」はいろいろな問題をはらみながらも、今やその廃止はあり得ないことを考えると、自分にとって「この小説はどう読んだのか」結論は堂々めぐりをするばかりである。いずれにしても一読の価値に値する書であることはまちがいない。
 パール・バックといえば『大地』があまりにも有名だが、これだけではない「社会派作家」として「差別の撤廃」や「福祉活動」ときには政治的発言や行動をしており、もっと評価されてもよい作家である。
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4 人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:単行本
 なぜ原爆投下を阻止できなかったのか。研究開発に関わった実在の人物をモデルに、当時の科学者たちの葛藤を描いた小説。
 50年前に出版されながら今なお再読(とりわけ日本人にとって)に耐えうるのは、著者であるパール・バックが多様な視点を持つからだ。幼いころに中国で暮らした経験を持つ著者は弱者、少数者の立場から物事を見つめることができるのだろう。登場人物の中で、著者の分身を思わせる女性科学者にこう語らせている。「体と頭脳のすべてをかけて、わたしたちがつくってしまったあの物に反対して、闘って責任を取りたい」。ちなみに彼女はインド育ちの設定となっている。
 帯には「欧米でベストセラーになった本書は、なぜ日本で出版されなかったのか」とあるように、本書の出版は07年。訳者はその理由をあとがきで明記していないが、国民感情を配慮してのことだろう。代表作「大地」で知られる著者だが、「核なき世界」を説く大統領が誕生した今こそ、中高生にはこの一冊を読んでほしい。
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