須賀さんの本は、戦争も含めた歴史の大きな流れの中に、
翻弄されながらも、強く生きぬいていく人々の話が多いと思うのだけれど、
本作は、その集大成的なものではないだろうか。
これまで以上の、鋭く、深く、大胆に物語が進行している気がする。
ナチスについて、教科書の通り一遍の知識しかなかったのだが、
SSのなかにも情報部のSDというのがあって、
それがユダヤ人の排除だけではなくて、共産主義者とか、
なによりキリスト教とも対立していたなんて初めて知った。
主人公のエリート将校アルベルトには、ナチスというだけで忌避できない
不思議な悪の魅力がある。組織の中で、冷酷に、家族や友人を切り捨てて
昇り詰めていくさまに、おもわずシビれてしまう。
対する、もう一人の主人公、アルベルトの幼馴染の修道士マティアスは、
教会の中のはみ出し者なのに、その熱さや正義心が周りの人物や読者に伝染する、
物語全体の良心ともいうべき存在で、思わず応援してしまう。
がんばれマティアス、アルベルトに負けるな。
でもアルベルトかっこいい…みたな。
アルベルトが情報部で、マティアスもナチス抵抗組織の連絡員になるので、
スパイ小説のような味わいがある。
とくに冒頭のエピソードや列車脱出、拷問シーンなど秀逸で、
舞台設定もあって海外のスパイものを読んでいるような気さえした。
それにしても、ここで終わるのか…という極道な場面で2巻に続いている。
あんなところで終わってしまって、アルベルトとマティアスの対決はどうなるんだ。
どうなるんだったらー!