当著者であられる久坂部羊医師の問題意識は、これまでの著書(小説・社会評論問わず)で明瞭である。即ち予算・人員から限りある医療資源は、少子高齢化の趨勢のもとでは持ちませんということに尽きる。当著では「安楽死」という現時点では大きく口にはされていないが社会として通奏低音的に徐々に広がるであろう問題を正面に据えて小説を組み立てている。
登場人物というより駒は、医師(会)、政治家、官僚、マスコミ、警察、患者、医薬品業界と総てが揃い極めてリアルな筋書きで踊り切ります。「廃用身」「破裂」では最後には読者に問題意識だけ残す後味が悪い形で医療改革は挫折して終えている点と比較すると興味深い。
小説だからこそ「安楽死」という問題を、綺麗事も汚いことも含めて患者・医師そして「社会」という面から照らし出すことに成功している問題作といえる。