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それにしても恐い。絵柄もさることがながら、物語も決してありきたりではない。ミステリー的な要素がちりばめられていることも手伝ってか、何となく暇つぶしに読めるような、質の低いものではなくなっている。
読んでいて、どことなくダリオ・アルジェントの映画を思いおこした。目が大きく見開かれるシーンや、登場人物たちが恐怖の余り叫んでいる表情を見ていると、二人の間には通じるものがあるような気がする。
とにもかくにも、マンガでこのような質の高いホラー、どこかでみたようなありきたりのものではなく、それでいてホラー以外の何ものとも呼べないような恐い物語を展開できるの漫画家さんは、楳図さん以外にはいないような気がする。
楳図氏がこれまでのコミック作家人生で描き続けてきた、恐怖・怪奇・幻想あるいは諧謔の物語が、この作品において見事に融合し、集大成されたと言ってよいでしょう。「真悟」や「14歳」は大変な問題作で、強い感動とともに、そのバロック的混沌や狂乱が作者自身の苦渋ともなって読者(筆者)に襲いかかってくるような息苦しさが少しあるように思えます。
そこへいくと「神の左手ー」は氏得意の短編連作の形式(「おろち」、「イアラ」など。私見によれば「漂流教室」もこの形式の応用)を採り、ホラーとファンタジーを存分に描き上げているといってよいでしょう。
楳図氏は「14歳」を最後として沈黙していますが、「神の左手ー」は彼にとって極めて幸福な作品だったのではないでしょうか?
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