まず、この原作を映画化しようとする意外性に、興味を持ちました。原作を読みはしたものの、連作としての印象は残っていましたが、単作としては正直特に記憶に残っていなかったからです。
果たしてその内容は、原作同様に、暗示的で、抽象的で、観念的で、間接的。少なくとも、ストーリーを楽しむといった種類の映画ではありません。しかし、だからといって退屈というわけでもなく、むしろそこが「映画らしい」とも言えます。
映像が綺麗です。というか、印象的かつ幻想的です。何となく、プログレッシヴ・ロックの巨匠、ピンク・フロイドを起想させます。
村上作品の映像化であるとともにもう一つの大きなポイントは、海外作品であることでしょう。いわゆる映像の「逆輸入」です。キャスティングは東洋人(日本人ではない)で舞台はアメリカです。まさしく「外からの目線」で村上作品を解釈している点が新鮮です。
「ノルウェイの森」は、原作が長編だったため映像化にあたっては相当端折らざるを得ず(しかも「突撃隊」などの重要なファクターを)、原作のニュアンスや世界観を完全に表現できたとは言い難かったと私は思っています。それに比べて本作は、原作が短編だったこともあり、「ノルウェイ」の比べれば(あくまで「比較的」です)、原作を忠実に映像化できたと言えると思います。
それにしても、村上春樹氏の作品を映像化するというのは相当なチャレンジなのだと、改めて感じました。ストーリーをなぞれば良いというわけにはいきません。作品の、文字にならない「根底」を映像化しなければ、まったく意味のない作業になってしまいます。それにチャレンジするのは勇気のいることです。
原作は、阪神・淡路大震災を共通項とした連作小説集でした。映画の中でも大震災がエピソードとして挿入されています。DVD発売の「タイミング」に、不思議な偶然を感じます。