2人の愛情が深すぎた為と占い師の言葉のせいで、アベルとサタナスは次々に不幸に巻き込まれるのですが、本人達は相手が幸せになる為に、本当に必死で自分を犠牲にしています。
傍目(読者を含む)には、それはもう昼ドラばりの不幸の連続に見えるのですが、当事者たちは自分が不幸だとはちっとも思っていません。
特にアベルは、抜け出せない世界へ平気で入っていき、堕ちる所まで落ちても、サタナスの為にお金や地位を手に入れています。そして、サタナスの幸せの為に自分の思いを殺し、嫉妬を抑え込み尽くす姿は健気です。
幼馴染みのエリィという神父も出てきますが、アベルはある意味、エリィ以上に(精神的に)穢れのない神に近い天使のように見えました。
また、闘牛士は、常に「死」と背中合わせにいる為に、見ている者をハラハラさせ、上手い闘牛をすればするほど人を興奮させるのですが、作者はさすが「闘牛好き」を自称するだけあって、まさに闘牛場にいるような臨場感がありました。踊るように闘牛をするサタナスがカッコイイ!!
凄い世界です。できることなら、一度サタナスの闘牛を見てみたいと思いました。
この話は、いろいろ複雑な伏線も絡み、せつなさ、苦しさ、痛ましさ(これらは、あくまで読者の思いです)も一杯詰まっていますが、2人ともたとえ環境や状況が変わっても、基本の愛情は揺るがず変わっていませんので、読んでいる間中ずっと強張らせていた頬が、読後はホッと緩みます。
熱い国での2人の熱い思い、熱い闘牛・・・
この寒い冬に是非、一読をお勧めします。
きっと温まりますよ。
(追記:朝南先生のこのイラストを「遺作」と呼ばねばならなくなった事がとてもショックで残念です。個人的にもイラスト買いしてしまうほど、先生の絵が大好きでしたので・・・。)