作者、南木佳士は鬱病と共に生きている医者であり、本書は五編の短編集である。
鬱病が重度になると自殺願望が生じることがあるが(作者、レビュアー含む)、鬱病の者にとっては、「自殺されちゃった僕」(これはレビュアーにとっては自殺願望を助長すると感じられる作)など、周囲の人が著したものより、心に沁みる作ではないだろうか。病状により差異があるので一概には言えないが、心に病を持つ者の一人である私にとっては、作中にある作者の心の動きなどに共感する部分も多く、心の平安を感じることができた。自分のほかにも同じような感じ方をする人がいるということを感じることは、病を持たない人に、一言「死ぬな!」と言われることより、我々には大切にしたい体験、貴重な瞬間、もしかしたら、生きていくために必要な力を与えてくれるものなのだ。
ただし、「火映」は作品として作者が伝えたいことが散漫になっているように感じられ、残念ながら星4つとさせていただきたい。